キム・ヨングァンのキャリアのスタートはモデル。2006年に「シングルズ ソウルコレクション」のステージでデビューした。その後、ディオール・オムの東洋人初の専属モデルとなり、パリなどで活躍。韓国に戻りモデル活動を続けていたところ、2008年にドラマ「彼らが生きる世界」の出演オファーがあり、小さな役だったが出演。これをきっかけに俳優の道を歩み始めた。
「モデル出身の俳優」と言われる事について、「それは、むしろ長所」と言うヨングァン。「僕がモデルをしていたのは事実だし。“俳優”と“モデル”、2つの修飾語を持ってるんですよ」と、自分のキャリアに自信を見せた。
モデルの世界ではトップクラスだったのに、ドラマで端役だった事が悔しくて努力を続け、チャン・グンソクの恋のライバル役だった「ラブレイン」、財閥御曹司を演じた「ピノキオ」などで、徐々に注目される存在に。そして、2016年に「ウチに住むオトコ」で地上波初の主役の座を獲得した。
この作品では、ある時は純情な年下男子、ある時は頼もしい父性を見せ、ティーンからおねえさままであらゆる年代の女性の心を鷲掴みにした。続く「番人!~もう一度、キミを守る~」では、チャラさと硬派な二面性を見せ、百面相のようにクルクル変わる表情が話題となり「表情富豪」と呼ばれるほどに。また、189cmの長身とガッチリした肩幅で着こなすスーツ姿に沼落ちした女子が続出した。
そして、2022年の「サムバディ」で初のサイコパス役に挑戦。体重を10kg以上増やし、ストーリー終盤には1日1食サツマイモだけを食べて、そこから約20kg減量、ベッドシーンでは全裸も披露するなど、体当たりで熱演。今までの「カッコよくて、キュートで、笑顔がステキ」といったイメージからは程遠い、不気味で怖い男を見事に演じ切り、「キム・ヨングァンの再発見」と絶賛された。
自他ともに認めるワーカホリック。その理由は、不安感から来ているんだそう。「撮影中は誰もがそうだと思いますが疲れるし限界点が来ます。休みたい、休みたい、と繰り返し思うけど、いざ終わって2週間ほど休むと、またものすごい恐怖が押し寄せてくるんです。長く休んだら、演技の仕方を忘れて怠惰になりそうで…」と、ストイックな一面を覗かせる。
そして「まだ皆さんや関係者に、僕という俳優が明確な確信は与えていないとわかっています。休まずにもっと色々な作品に出演してこそ、僕ならではの演技ができるようになると思うし、様々なキャラクターのオファーが来ると思います。多作ですが、消耗戦ではありません」と語っていた。
このような発言を聞くと悲壮感が漂うが、普段の彼はイ・ソンギョンが「キム・(クレヨン)しんちゃん」と呼び、彼女のスマホの電話帳にも「しんちゃん」と登録されているほど明るい人物。youtubeに影響されて4kgの肉の塊とプロ仕様の肉切り包丁を買ってしまうミーハーなところもある。マンガ喫茶のオーナーになりたかった事があり、膨大な量のコミックスを所蔵し、「ミカンを食べてる時にヒマで、やってみたらできた」と、ジャグリングが特技だと言うオチャメな面もある。
休んでいる間は、起きたい時に起きて何でも食べて、TVやyoutubeを見てまた寝る毎日。近ごろはミステリーや陰謀論を扱うチャンネルを「わぁこういうのは本当なのかなぁ」と、楽しんで見ているとの事。
そして次回作が決まれば、前作を最初から見て、不必要な演技があれば、参考にして準備に入る。最近は新人の頃には無かった「演じる役の人物と親しくなりたい」という欲求がとても大きくなっているんだそう。今回のドンジンとも親しくなったのは間違いない。「しんちゃん」のかけらも無く、元気無く肩を落とした姿は「ハン・ドンジンという人物が実在しているようだった」とソンギョンが言うほどのシンクロ率だ。
「すぐに1日で良い俳優になれるとは絶対に思わない。そうなるのはまだ遠い未来のようなので、現在できる事に集中して、ただ一生懸命やるしかありません」と言う彼が、今後どんな姿を見せてくれるのか、楽しみだ。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョン編集部
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