――今回演じられたシャザムは、子供の部分と大人の部分を持ち合わせたヒーローです。子供や年齢の離れた役を演じるコツはありますか?
宮野: 20年以上声優のお仕事をやらせていただいている中で、過去の作品の続きを大人になってから演じる機会もあって。ある作品で演じていた高校生の役を自分が30代になってから演じるというときに、尊敬する監督から「高校生だからね?」と念を押されたことがありました。その監督からは「心が成熟するとアウトプットが落ち着いてしまうから、経験値を忘れて」、「経験は声や性格に表れるから、それを知らない状態に戻して」とよく言われます。だから子供や年齢の離れた役を演じるときは、「これを経験していなかったときはどうだったかな」と考えたり…。年齢を重ねるほどに子供を演じるのは難しくなりますが、裏を返せば、いまだに10代の役をやらせていただけるのが声優という仕事の面白さでもありますね。
――経験してしまっていることを、知らない状態に戻すのは難しいように思います。
宮野:「あのとき、どう感じていたかな」と、当時の感情を思い出すのが近道かもしれません。経験してしまったことを本当になくすことはできませんが、大人は“考える”こともできますから。自分が子供だった当時の感情は知っているはずだから、「もっとまっさらに感じていたな」と考えて、戻ることができる。そういうふうに、声優の仕事をするときは、声の年齢ではなく演じる人物の内面を探る作業をたくさん行います。
――宮野さんは吹き替えも多数担当されていますが、声優としてアピールしたい吹き替え作品の魅力というのは?
宮野:字幕を追わなくてもいいことですかね。字幕を追っていると見逃してしまうシーンや、字幕ではフォローしきれない部分は確実にあると思います。特に「シャザム!」のような会話のテンポが速い作品だと、全部を字幕で網羅するのは難しいのではないでしょうか。例えば、遠くでしゃべっている人の声は字幕では表現されないことも多いですが、声優としてはその奥から聞こえてくるセリフをすごく頑張っていることもあって(笑)。そういう部分を伝えられるのが吹き替えの魅力だと思います。
――最後に、「シャザム!~神々の怒り~」を楽しみにしている読者にメッセージをお願いします!
宮野:コメディー要素は大きいですが、楽しんで見ているうちに、シャザムが家族に対して非常にこだわりを持っていることも分かってきます。そこで家族の大切さや、仲間への思い、“絆って何だろう”と考えさせられるんですよね。年齢を問わず、多くの人に見てもらいたい、本当にすてきな映画だと思います。
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