6月24日(土)公開の映画「結婚」で、いくつもの偽名を操り、さまざまな女性たちを華麗にだます結婚詐欺師・古海健児(うるみ・けんじ)を演じたディーン・フジオカ。「俳優と結婚詐欺師って近いものがあると思う」と語る彼自身、俳優、ミュージシャン、報道番組の“インフルエンサー”という3つの顔を持つ。そんなディーンの“真実”の姿に迫ってみた。
「俳優はとにかく受け身な仕事。こんな作品を作りたいとオファーされたときに、自分がどれだけ趣旨を理解できるのか、リクエストされた立場で、求められていることを、彼らが思う100%のラインをちょっと超えるくらいで返せるのか。常にそこの闘いだと思います。そして、今回演じた結婚詐欺師と俳優は、“演じる”という意味では似ているんですよね。なので、これまでの俳優としての経験を役づくりやアプローチに生かしていければいいなと思いながら、撮影に臨んでいました。素の古海は、自分の心境を発することはないけれど、女性たちをだましているときは、普通に笑ってみたり、なでるようにしゃべってみたり、逆に冷たく突き放したりと、バリエーションを付けて演じるようにしていました。女優さんたちとのシーンは、相手の方の演技を見て、それなら自分もこうしようとか、セッションでどんどん変化していった気がします」
多くの女性をだます一方、実は所帯を持っている古海。“幸せな結婚生活”を送りながらも、何かに突き動かされるように結婚詐欺を繰り返す古海には、心の闇が垣間見える。
「古海は、業の深い役だなと思いましたね(笑)。でも、彼は自分のことが分からず、何を目的に生きればいいのか分からないという衝動を強く感じている。普通は年を重ねると理性が強くなり、自分のことも理解できるようになるから、心のコントロールも利くようになる。でも、子供のころって、自分でもよく分からないことをやっていたと思いません?古海はそれを強く残したまま、大人になってしまったのだと。鮮やかに結婚詐欺を働くけれど、衝動という波に揺られてフラフラしているアンバランスさは、魅力的な部分でもあるんですけどね」
そんな古海を象徴するシーンの一つが、公園で一人、ルービックキューブをもてあそぶ場面。これは、ディーン自身の提案で生まれたそう。
「たくさんの女性とのスケジュールを管理している結婚詐欺師が、色を合わせていく…という意味合いとして、シンボリックだと思ったんです。それだけでなく、古海の虚無感とか、危ない男という象徴としても当てはまりますよね。大人が昼間から、公園で一人、ルービックキューブで遊んでたら危ないでしょ(笑)。理由は後から付けようと思えばいくらでも付けられるから、僕なりにこうした方がいい作品になるんじゃないかと思うことは、かなり提案しましたね」
今作では、ディーンが主題歌も担当。古海の心情と自分の経験を重ね合わせた作詞作曲で映画を彩る。
「古海が持つ、『あした朝起きたら、どうしたらいいのか分からない』という空白感は、多分誰でも感じたことがあると思うんです。僕も20代前半のころは強く感じていたから、その気持ちを思い出しながら作りました。エンディングは、古海がどうなっていくのか…見てる方それぞれが物語の続きを想像していただく形にはなりますが、ぜひ曲が終わるまで堪能していただけたらうれしいです。ミュージシャンとしての活動は、一番自分の本質を出せる場なのかもしれないですね。ステージに上がると素の自分が出ちゃいますし、詞や曲を書くときもうそはつけない。テーマを与えられることもありますが、自分の言葉で書くので、そこはやっぱり自分の中から出ているものだと思います」
今後も、役者として出演作を多数控えながら、ことし7月には東京、大阪、福島でのライブも。さらに、“インフルエンサー”として取材に出る日々を送る。
「生放送は緊張します。初回はモニターに映る自分を見て、笑いそうになっちゃいました(笑)。始めたばかりなので、何をすることが正しいのかと、探しているところです。生きることが困難な人たちの、人生が変わるきっかけを後押しできればいいなということは意識しています」
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