2022年10月から2クール連続放送中のアニメ「うる星やつら」(毎週木曜深夜0:55-1:25、フジテレビ/ディズニープラスなどで配信中)では、国民的キャラクター・ラムちゃんを好演。2023年1月クールでは「スパイ教室」(毎週木曜夜11:30-深夜0:00、TOKYO MXほか)のティア役も話題を集めたのが、声優界の第一人者・上坂すみれだ。2012年から本格的な声優活動を始め、2015年の「声優アワード」で新人賞を受賞。歌手、ナレーター、役者、モデル、番組パーソナリティーなどとしても活躍し、愛らしいルックスを武器にフォトブック6冊、写真集3冊もリリースしている。また、2023年はアーティスト活動10周年の節目にもあたり、2月8日に13rdシングル「LOVE CRAZY」(「イジらないで、長瀞さん 2nd Attack」オープニングテーマ)を発売したばかり。今回、幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が、独自の視点から上坂の魅力を紹介する。
出世作は、やはりテレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役ということになるだろう。参加作品は「中二病でも恋がしたい!」「アイドルマスター シンデレラガールズ」「イジらないで、長瀞さん」「ガールズ&パンツァー」「ポプテピピック」「BanG Dream!」「虚構推理」など、数知れず。老舗音楽番組「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)のナレーターも不定期で担当している。
温故知新のマインドの持ち主ということか、USSRの文化や歴史の他、昭和の映画やプロレスなどにも深い関心を寄せているようだ。特に戦後屈指のニヒル俳優・天知茂(1931~85年)に関する再評価は上坂の“推しっぷり”なしにはあり得なかったはず。2022年、池袋・新文芸坐で行われた特集上映「夜に薫り立つ、ニヒル 新東宝の天知茂」にトークゲストとして登場し、その魅力を語ったことも記憶に新しい。
ほか、FUJI ROCK FESTIVALに毎年のように登場して感動的なステージを見せる平沢進の熱心なファンでもあるそうだ。なんという鋭いセンスなのか。その鋭敏さは、私の考える限り、上坂の仕事に対する姿勢を貫く背骨のようなものである。だから多彩な中に統一感が感じられる。活動範囲は一見雑多、だけどすべてが上坂すみれワークスという壮大な棚の中にしっかり収まっている。地に足が着いているとは、このことだ。
上坂に関して私は歌から入門し、その後、声優としての姿を知り、さらに2017年放送のテレビ番組「上坂すみれのヤバい○○」を見て、その並外れた才能とイマジネーションに言葉を失った。特に内田真礼をゲストに迎えた「野球」「パリピ」をテーマにした回の破壊力は語り草になるはずだ。この磁力に取り込まれたらヤバいかもと、気持ちをクールにするつもりで文藝別冊の「米原万里:真夜中の太陽は輝き続ける」を読んだら、そこにも上坂の談話が掲載されていた。まさに神出鬼没。
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