コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、スマートフォンのカメラをとおして老夫婦の心あたたまる物語を描いた漫画『残したいもの』をピックアップ。
作者である稲空穂さんのコミック第1巻『特別じゃない日』(実業之日本社)に収録され、稲空穂さん自身が2021年11月26日にTwitterに投稿し話題を集めた本作。当時、Twitterでは10.8万以上の「いいね」とともにリツイートも2.5万以上に及ぶなど大きな反響を呼んだ。この記事では、稲空穂さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
頭の上にメガネを乗せていることを忘れ、メガネを探して家中を歩き回る祖父。そんな姿を微笑ましく見つめる祖母は、スマートフォンのカメラで撮った祖父の写真を娘や孫に送り、その反応を楽しんでいた。うれしそうに祖父の姿ばかり撮影しながら、祖母は「“そのとき いいなって思ったもの”をすぐ誰かに見てもらえるのっていいわね」と呟く。スマホを勧めてくる祖母を横目に、祖父は「カメラがあるから」と言い、あまり興味を示さずにいた。
急な来客があり、祖母はスマホを机に置いて玄関へと向かう。その間、祖父は置かれたスマホを手に取ると見様見真似でカメラを立ち上げ、撮影を試みる。ふと玄関のほうに目をやり、知り合いと楽しそうに話す祖母の表情が見えた祖父は、その姿をこっそりと撮影し…。
作者である稲空穂さんは、実際にありそうな“日常の些細な出来事”や“小さな幸せ”の物語を優しいイラストとともにハートフルに描き、SNSを中心に人気を集めている。本作では、スマートフォンのカメラをとおして老夫婦のかけがえのない日常を切り取った心あたたまる物語が描かれ、話題を集めた。
Twitter上では「すごく優しい…優しすぎて尊い…」「泣きそうになる」「ほっこりと癒されました」「とても素敵なお二人さん」「心が幸せになれました」「こういう夫婦になりたい」「祖父が生きていた時の記憶を思い出して泣けてきました」「特別な日も良いけれど何気ない日常的なものも宝ですよね」など多くのコメントが寄せられ、反響を呼んでいる。
――『残したいもの』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
明確なモデルやきっかけがあったわけではなく、自分自身の「こうなりたいな」「こういう風に言えたら、言ってもらえたらいいな」という理想像を基に描いたお話です。老夫婦のスマホ操作や、写真撮影に指が入ってしまうなどの描写については、自分の祖父母をモデルにしております(笑)。
――スマートフォンをとおして老夫婦のかけがえのない日常を描いた本作には、Twitter上で10.8万以上の「いいね」が寄せられ話題を集めました。この物語に込めた思いやテーマがあればお教えください。
たった今、自分自身が経験している目の前の出来事はどんなに素晴らしいことやうれしかった出来事でも、時間の経過とともに忘れてしまうことが多いです。忘れたくない思い出があることは、それだけで幸せなことだということと、現代の、残す手段がたくさんある幸せを伝えられたらと思い作成したお話になります。
――本作の中で、稲空穂さんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?理由と共にお教えください。
おじいちゃんがおばあちゃんの写真を撮るシーンです。真剣に写真を撮るときって、夢中になって自分がどんな状態かも忘れてしまうなあ、あるあるだなあ、と日々の自分を思い返しながら描いていました。
――稲空穂さんは本作が収録されている『特別じゃない日』(実業之日本社)にて、“家族”をテーマにした心あたたまる作品を多く描かれていますが、創作全般においてのこだわりや意識していることがありましたらお教えください。
創作をすることに関しては、基本的に自分の体験した以上のことは描けないと思っているので「IQがものすごく高い人」や「無敵のサイコパス犯罪者」などの個性的な人物を生み出すことが得意ではないのですが、それならば親しみやすく身近に感じやすい、読者の皆さんが登場人物の行動や言動に共感してくれるような人物や人間関係を描写できるよう、意識しながら描いています。
――最後に読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
生み出した作品は、読んでいただけることによってやっと、キャラクターやストーリーに命が吹き込まれると思っています。これからも誰かの心に寄り添えるような作品を作っていけたらとても嬉しいです。いつも読んでいただき本当にありがとうございます。
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