コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、母親によるいつまでも変わらない“子どもを思う気持ち”を描いた漫画『なりたい自分』をピックアップ。
作者である稲空穂さんのコミック第1巻『特別じゃない日』(実業之日本社)に収録され、稲空穂さん自身が2021年11月28日にTwitterに投稿し話題を集めた本作。今回は、続編となる第3巻『特別じゃない日 一緒に食べよう』の発売をうけて、第1巻からの本作を紹介する。この記事では、稲空穂さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
小学生の息子・僚汰と娘・日成子の母親である友美。コンビニでパートとして働き、自身の母に学校帰りの子ども2人の面倒を見てもらいながら日々忙しく過ごしていた。そんな中、母が部屋を掃除していると友美が小さい頃好きだったアニメの変身グッズを見つける。懐かしさに感激する友美だったが、思い出に浸る暇もなく次の瞬間には子どもの相手で手一杯に。友美の母は、そんな“母親”となった娘の姿を感慨深く見つめていた。
ある日、勤務先のコンビニに日成子が好きなアニメの新作アイテムが入荷する。それを手に取りながら友美自身も幼い頃、母にアニメのキャラと同じ髪型をねだり、かわいくセットしてもらえてうれしかったことを思い出す。
帰宅後、友美の母と夕食を先に済ませていた子どもたちに買ってきたアイテムを渡すと、日成子から「私もキューティーみたいな髪の毛にしてほしい」とお願いされる。そのことをうれしく感じた友美は、母が用意してくれたばかりの温かい夕食もそのままに、日成子の髪を先に仕上げようとしていた。すると、それを見た母も友美の乱れた髪の毛をそっと結ってくれて…。
作者である稲空穂さんは、実際にありそうな“日常の些細な出来事”や“小さな幸せ”の物語を穏やかなタッチのイラストとともにハートフルに描き、SNSを中心に人気を集めている。本作では、幼少期ならではの“憧れる心”と、いつまでも変わらない母が子を想う気持ちが描かれ、話題を集めた。SNS上では「なんだか胸いっぱいになって泣いてしまいました」「何回読んでも泣く」「ほっこりします」「大切な気持ちが思い出される」「素敵なお話」などのコメントが寄せられ、反響を呼んでいる。
――『なりたい自分』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
赤ちゃんから保育園に上がり、学生、就職、結婚をし自分の肩書は都度変わっていってしまいますが、自分から見たときの「家族」はいつも変わらず同じように自分を見てくれています。それはとてもうれしく幸せなことなんだなと、母や祖母と話しながら感じたことがきっかけです。
――本作を描くうえでこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
過去、自分自身が憧れた「魔法少女」だったり「戦隊ヒーロー」は大人になった今では、自分にそんな力は無く、変身することができないとわかってしまいましたが、そんな自分を否定せずに見守ってくれた存在がいること、大人になった自分は見守られていた立場から、見守る立場にもなれたこと、その上で、まだ「なりたい自分」にもなれること。そのことを複数の登場人物の視点から表現しました。
――本作の中で、稲空穂さんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?理由と共にお教えください。
親子三代の髪結いシーンです。「母親」が「娘」になった瞬間を切り取れたと思っています。
――本作が収録されている『特別じゃない日』(実業之日本社)では、何気ない日常を舞台に登場人物たちの小さな幸せが繋がっていく物語が描かれています。稲空穂さんにとって、各話のストーリーを生み出す際の元ネタやきっかけとなるものはどんなところにあるのでしょうか?
基本的には明確な元ネタはなく、「こうなったらいいな」や「こんな風にできたらいいな」という自分の理想を基に作成をしています。登場人物の性格や仕草、お話のテーマに関しては家族や友人、元同僚をモデルにしていることが多いです。
――最後に読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
「特別じゃない日」が、読者の皆様ご自身の大切な人を思い返すきっかけになればこれ以上うれしい事はありません。私自身、「特別じゃない日」を描くたび、これまでの自分を顧みながら大切な人を思い浮かべています。そんな機会があるのも、読者の皆様が読んでくださって「特別じゃない日」が続いているお陰です。
いつも読んでいただき本当にありがとうございます。これからも続くお話を見守っていただければ嬉しいです。
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