いつかは、完全体のSTARになりたい。その念願を叶えるまで――前田佳織里「未完成STARへの道」

2023/03/27 18:00 配信

音楽 アニメ インタビュー

わたしがここまで来られたのは、いろんな人とのご縁があって、ひとつひとつのことをまっすぐにやってきたから


――EPの内容から少し話はさかのぼりますが、音楽活動をやりますよ、という話になったのはいつだったんですか。

前田:YouTubeチャンネルで、ドッキリで発表されました。その前くらいから、「ボイトレに通おっか」みたいな(笑)、さり気ない感じではありつつ、正直うっすら「そうなのかな」と思っていて(笑)。そのときは、本当に嬉しかったですね。まさか自分が、と思いました。

――でも、歌はやりたかったんですよね。

前田:やりたかったです。

――念願が叶った。

前田:そうです。たぶん、念願だったからこそ、察するのが早かったのかもしれないです。「この流れは……?」って(笑)。

――潜在的な願望としてはずっとあった、と。

前田:そうですね。

――EPに収録された4曲のような楽曲を歌える人が、デビューから5年を経て、というのは、第三者的に見ると「なんで今までしてなかったんだろう?」と不思議に感じたりもするんですけども。

前田:ファンの方も待望してくれていた方がいて、「まだアーティストデビューしないの?」って、プラスの意味でずっと言ってもらっていました。なので、みなさんにようやく発表できてよかったな、と思います。でも、アーティストデビューが決まってボイトレに行って、さらに自分の歌を磨くようになってから、作品のキャラクターとして歌う機会にも底力がついた実感がありました。いろんなことが見えてきて、それが本当に楽しいです。

――芝居が歌に活きる、歌が芝居に活きることに加えて、キャラソン+自身の歌もある今は、3つの要素が三位一体になって、いい影響を与え合っているんじゃないですか。EPを聴いていても、前田さん自身がパワーアップしている感じがあるというか。

前田:ありがとうございます。自分の感情もちゃんと乗せて、キャラクターにもなりきって。ブーストされている、というか。

――音楽活動をスタートして念願が叶ったわけですが、歌いたい、と願っていた過去の自分に、今の前田さんから何か言葉を届けるとしたら、なんと言いますか。

前田:う〜ん、やっぱり「2016年に絶対上京しろ」って言います(笑)。「夢は叶ったよ」ではなく、まず「2016年に絶対上京しろ」って言いたいです(笑)。あとは、「前に進むことを諦めないでほしい」って言うかもしれないです。人生にはいろんな分岐点があるけど、わたしがここまで来られたのは、いろんな人とのご縁があって、ひとつひとつのことをまっすぐにやってきたからだと思っていて。もちろん、紆余曲折、挫折もあったけど、前に進むことを諦めなかったからここまで来られたんだなって実感します。

ありがたいことに、人との縁にすごく恵まれていて。オーディションのことを教えてくれた先輩もそうですけど、みんなが助けてくださるとていうか、協力してくれる方に出会うことが多いんです。だから、過去の自分には、「人への感謝を絶対に忘れないでほしい」ということも、声を大にして言いたいです。

――そういう人が常に近くにいるのは、前田さんが「巻き込もうとしてる人」だからじゃないですかね。

前田:あっ、そうか。主導権はわたしだったんですかね。

――たとえばミスドの先輩にしても、前田さんが自分の夢や目標をその人に伝えていなければ、オーディションの情報も得られてないわけで。

前田:そうですね。昔から、「声優になりたいんですよ」ってずっと言ってました。「実は声優目指していて」って、まわりに言いづらいって考える人もいるかもしれないですけど、わたしは「夢を語って何が悪いのか」っていう考え方なんです。だから自分から言っていくし、環境に恵まれてきたと思います。そういうことを言っても否定されない環境にずっといられた、というか。「え〜?」ではなくて、「いいじゃん。応援するよ」って言ってくれる人たちばかりだったので。

――情報とかご縁が、勝手にやってくるわけじゃないですからね。前田さんが発信し続けたからこそ、縁が育っていくというか。

前田:そうかもしれないです。2022年は、言い続けてきたことが全部叶った年でした。「北九州に帰りたい」って言ったら北九州観光大使のご縁をいただいたり、「飛躍したい」って言ったらスカイダイビングで上空4000メートルから飛ばされたり(笑)。「アーティストデビューしたい」もずっと言ってたから、デビューもさせていただけて。言葉には発信力があるけど、それもまわりの方の協力なくしては絶対に実現できないことばかりなので、まずは人間関係を大切に、人への礼儀を忘れずにいたいです。

取材・文=清水大輔
写真=北島明(SPUTNIK)
スタイリスト:柏木作夢
ヘアメイク:坂本由梨奈(Leading)

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