田中圭、ダンディな色気と少年のような愛らしさ シリアスとコミカルを使い分ける演技の魅力

2023/03/25 21:30 配信

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田中圭※2021年WEBザテレビジョン撮影

民放公式テレビ配信サービス・TVerにて、天海祐希、江口のりこ、田中圭、波瑠、福原正治、芳根京子の6人に焦点を当てた「俳優ドラマ特集」と、TVer恒例「名作ドラマ特集」が実施中。その中から、今回は4月スタートの新ドラマ「unknown(アンノウン)」(毎週火曜夜9:00-9:54、テレビ朝日系)で高畑充希とともにW主演を務める田中圭の過去作をピックアップ。ダンディな色気と少年のような愛らしさを兼ね備えたその魅力を紹介する。

「おっさんずラブ」での大ブレイクは必然だった


日本テレビ系にて水曜夜10時に放送された1月期のドラマ「リバーサルオーケストラ」が感動のフィナーレを迎えた。本作は門脇麦演じる幼い頃から数々のコンクールを総なめにしてきた元天才バイオリニストの市役所職員・谷岡初が主人公。初音はひょんなことから地元の”ポンコツ”オーケストラの立て直しに挑むのだが、そんな彼女を大いに振り回すのが田中圭扮するマエストロの常葉朝陽だ。

音楽への情熱が強いあまりに初音をはじめ、オケのメンバーに対しての指導にもつい力が入る朝陽。その厳しさったらもはや悪魔の所業。だけど、そこにはちゃんと愛があって、時折見せる優しさや満面の笑みに沼落ちする視聴者が続出した。どうしてこんなにも田中が演じるキャラクターは私たちの心を虜にするのだろうか。

高校生の頃に芸能界入りを果たした田中はデビュー以降、現在に至るまで俳優として数え切れないほどの作品に出演してきた。2009年には、お笑いコンビ・麒麟の田村裕の自叙伝を元にした単発ドラマ「ホームレス中学生」(フジテレビ系)と4月期の連ドラ「子育てプレイ」(MBS・TBS系)の2作品で主演を務めるも、いわゆる脇役時代が多かった田中。

とはいえ、「所轄魂」(2015年、テレビ朝日系)では時任三郎演じる所轄署の刑事である父とともに事件を追うキャリア管理官の成長を骨太な演技で魅せ、一方「5→9〜私に恋したお坊さん〜」(2015年、フジテレビ系)では石原さとみ演じる英会話講師のヒロインを何かと気にかける先輩役で女性視聴者のハートを射止めるなど、タイプが異なる役を次々と乗りこなし、確かな実力をアピールしてきた。

そんな田中が芸歴18年目にして、ドラマ「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)でブレイクを果たしたのは必然だったと言えよう。田中がシーズン1で演じたのは不動産会社の営業マン・春田創一。仕事ぶりは真面目だが成績は今ひとつ、愛嬌だけはあって人付き合いもできるのに恋愛はうまくいかない。なのに突然、部下からの信頼が厚い営業部長の黒澤武蔵(吉田鋼太郎)と、本社から異動してきた超優秀な若手社員の牧凌太(林遣都)から想いを寄せられるという、まるで少女漫画のヒロインみたいな役どころだ。

しかし、そんな非現実的な設定をも物ともせず受け止めた田中。春田のポンコツだけどお人好しで憎めない性格はコミカルに、同性である牧に惹かれていく心の葛藤はシリアスに表現し分け、見事に誰からも愛される主人公を作り上げた。以降、私たちは彼のこのテクニックに大いに振り回されることとなる。

ギャップで魅せる男・田中圭


田中はコミカルな演技とシリアスな演技の使い分けが非常に上手い役者だ。同じ作品の中でもシーンに合わせて、その塩梅を決めるメーターを自由自在に操る。例えば、とあるマンションで起こる“交換殺人ゲーム”を描いた「あなたの番です」(2019年、日本テレビ系)では、原田知世演じる新婚の年上妻・手塚菜奈を溺愛する夫の翔太を好演。彼の犬みたいに天真爛漫で人懐っこいキャラクターはハラハラドキドキする展開の中で唯一お茶の間の癒しとなった。

しかし、第1章のラストで菜奈が交換殺人ゲームに巻き込まれ、命を落とすや否や雰囲気が一変。愛する妻を失った哀しみはまもなく怒りへと変わり、翔太は復讐に取り憑かれていく。それに伴って、少年のようだった翔太から大人の色気が溢れ出てくるのが印象的だった。この翔太の大きな変化があったからこそ、本作は2クール連続の放送でもダレることなく最後まで視聴者を引きつけることができたのではないだろうか。

近年はどちらかといえば、可愛らしい印象よりも30代男性の落ち着きと色気で見るものを虜にしている田中。2020年には「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(フジテレビ系)では総合病院の薬剤部副部長・瀬野章吾役、翌年には「ナイト・ドクター」(同局)で救急救命センターに所属する医師11年目の成瀬暁人役でベテランの風格を漂わせた。どちらも田中本人のイメージとは異なる無愛想なキャラクターで第一印象は良いとは言えないのだが、そんな彼らから内に秘めた熱い思いや、人間味あふれる部分が出てきた時に心が一気に絡め取られる。どんな作品でも、どんな役柄でも、田中は常に何層も織り重なった奥行きのある演技で私たちを驚かせてくれるのだ。

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