――本作に登場するキャラクターはそれぞれ個性的。主要キャラクターとなるマル、キルコ、トキオの3人はどのような人物だと捉えていますか?
マルに関しては、すごく純粋でまだ何も知らない感じなんだろうなと。変に擦れていなくて明るいところは魅力的だと思います。マルは自分の過去を知らないところからキルコと出会い、だんだんと自我を持っていく印象があり、キルコと出会わなかったらどうしていたんだろうなと思うことはあります。何も感情も伴わず、ただただ日常を過ごしていたんじゃないかと。
一方、キルコはキルコで複雑な境遇にあり、一人で抱えるには重過ぎる過去を持っているので、キルコもマルと出会わなければ、それはそれで潰れていったんじゃないかという気はしているんですよね。この2人を語る上で、お互いのことを無しには語れない。相互補完的な関係なんだと思っていますね。
そして、トキオは純粋な思春期みたいなキャラクターですね。マルとは違う純粋さを持っていて、マルはわりとしんどいことも経験してきている中で純粋さを保っている印象ですけど、トキオは外圧にさらされずに生きてきているんですよね。思春期に生まれるいろんなものへの興味だったり嫌悪感だったり、そういうものを象徴しているキャラクターなのかなと思っています。
――ちなみに森監督の推しキャラは誰ですか?
学園の園長や、マルとキルコが出会うジューイチのような個性の強いキャラクターは、単純に制作する上で楽しいですし、個人的にも好きですね。ただ、多くの方はミミヒメが好きなんじゃないかなと。誰よりもヒロインっぽい感じがして、愛されている気がしています。
――監督が今のお仕事を目指したきっかけは何でしょうか? 影響を受けた作品やクリエーターの方がいらっしゃったら教えてください。
そうですね、きっかけというと、たまたま大学の先輩に「イヴの時間」の監督もされている吉浦康裕さんがいらっしゃったことですかね。交流があったわけではないんですけど、個人でもこういうものを作れるんだな、すごいなと思い、そのあたりから実際に仕事にすることを考え始めたかもしれません。
――では、本作を通して視聴者に伝えたいメッセージはありますか?
原作内に、すでに石黒先生の伝えたいメッセージが込められていると思いますので、制作側が別の何かをプラスで乗せるということはないですが、この作品は本当に要素が多く、災害、テクノロジー、ジェンダー的な観点など、さまざまな角度から見ることができます。そういったちりばめられている要素の中のどこを拾ってどう楽しんでいくかというのは、見る人がそれぞれ取捨選択していただけたらいいなと思いますし、それができる懐がある作品だとも感じています。だから、僕としてはそこをあまりゆがめない形でちゃんと伝えるのが、アニメを作る上での責任だと思っています。
――最後に、序盤の見どころを教えてください。
1話から伏線が張られていくので、謎が気になるとか、マルとキルコが廃墟を旅する世界観が好きとか、色々な観点で見てもらえたらうれしいです。制作側としては、1話の制作が一番難しいですね。導入部分なので、世界観やキャラクターを好きになってもらいたいですし、この先を見たいと思ってもらえたらいいなと思い、作りました。
2話以降はアクションシーンもあり、ストーリーも動いていくので、毎話、分かりやすく見どころが出てくると思います。ご期待を裏切らないよう、また皆さんに楽しんでいただけるように、スタッフ一同、一生懸命制作していますので、ぜひ応援していただけたらうれしいです。
◆取材・文=Rum
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