――近年VODサービスの隆盛に伴い、セクシー要素などが盛り込まれた過激なドラマが人気を集めている印象ですが、作り手としてはどのように感じられていますか?
久保田 配信って冒頭から刺さってこないと、どんどん(見るものを)変えちゃうじゃないですか。テレビもチャンネルを変えるけど、配信はそれよりずっとコンテンツの選択肢が多いから、すぐに刺さることが大切。そんな中、(セクシー要素というのは)やっぱり最初のフックにはなりますよね。でも最終的にはストーリー。そこからどう物語に惹きこむかが、制作と演者の腕の見せどころだと思います。
清水 話題にしたいですからね。見られないで終わってしまうのが一番よくない。サムネイルやポスタービジュアル、出演者と一緒で、冒頭のシーンが視聴を決めるのに重要。あと今配信で流行っているドラマって、バイオレンスだったり不倫だったり、地上波ゴールデンタイムのドラマよりもちょっとファンタジーなものが受けるのかなと思います。
――他局の深夜ドラマでもその傾向は見られますよね。ちなみに、お2人は次にどんなジャンルが流行ると思いますか?
清水 わかったら教えてほしいですよ(笑)。
久保田 (視聴単位が)個人なので、「人の欲」「思いのまま」みたいなところは今後もテーマになってくると思います。暴力、復讐、悩み…地上波は性的表現が最も難しくて、それよりはバイオレンスの方が、ヤンキーものや刑事ものがあるようにやりやすいので、そっちに流れるんじゃないかなと思います。
――近年、深夜を中心にドラマ枠は増加傾向にあります。TVer見逃し配信やVODサービスが普及し、ドラマの方が継続的に視聴されやすいことや、円盤化・映画化といった可能性が大きいことが理由と聞きますが、制作側からするとドラマのヒットは出やすくなっていると感じますか?
清水 ヒットは出にくくなっているんじゃないですか。大爆発はなかなか生まれない。でも堅実な作品は増えている。これって、局が今までのように放送収入だけで全てのコンテンツを作れる時代じゃなくなってきてるからですよね。(配信など)二次利用含めて少しでも収益化していかないといけない状況になっている。
一方で、かつては本当に厳選されたベストセラーだけが映像化されていましたが、最近はすごく量が多いので、本当に時間をかけて、芯を食った作品を考えるということはできなくなってきているんじゃないか。
久保田 事業とクリエイティブって天秤にかかるところがあって。キー局ゴールデンタイム作品はテレビ局のプラットフォームが大切にしているけど、深夜帯の作品はDMMに売ろうか、Amazonに売ろうか…ということになっていく。韓国なんかはVODサービスからの収益を見込んだ制作費だから、すごいお金をかけて制作できるわけで。日本のドラマの金脈がどこにあるか、皆試行錯誤しているんじゃないでしょうか。
――VODサービスからの収益額が見込めれば、トータル制作費を上げることができるわけですよね。
清水 そうですね。ただABCテレビは自社プラットフォームを持っていないんですけど、キー局は自社で(VODサービスを)持っていて、そこでの配信は自社内だからセールスが成立していない。外部にセールスするにしても、企画書段階では難しい部分がある。でもそれが成立すれば、今後はもっと予算をかけたコンテンツが出てくる可能性はあると思います。
久保田 テレビ局もあがいてるのが目に見えますよね。
――最後に、今回の共同制作企画で実現したいことを教えてください。
久保田 若い人にピンポイントに刺さってほしいですね、ひとりひとりの視聴者に深く刺さって、SNSで話題になってほしい。
清水 今は何曜何時に何のドラマを放送しているかなんて、世の中の人の多くがわからない時代になっている。だからまた違った形のブランディングとして、「この両者(ABCテレビとDMM TV)のタッグが次に何をやるのか」ということが話題になっていったらいいなと思います。
■取材・文/WEBザテレビジョン編集部