どこを切り取ってもアート…落書きだらけのトイレ、口元アップの写真 映像美に魅了される<ライ・レーン>

2023/04/11 11:45 配信

映画 レビュー

「ライ・レーン」ディズニープラスのスターにて独占配信中(c)2023 20th Century Studios, British Broadcasting Corporation, The BritishFilm Institute.

新たな出会いに心躍る季節。3月31日から配信が始まった「ライ・レーン」は、そんな季節にぴったりの異色のロマンティック・コメディ。新鋭監督の地元ライ・レーンという美しいロケーションと共にアーティスティックな要素満載で描かれるラブストーリーはどこを切り取ってもポップで、まるで一冊のアート集のようだ。

最悪で最高のタイミング 傷心者同士の出会い


「ライ・レーン」は南ロンドンの街・ライのライ・レーン(ライ通り)を舞台に物語が繰り広げられる作品。ディズニープラス「スター」にて独占配信されている。

6年間付き合った彼女が親友と浮気していたことに気づき、別れることになったドム(デヴィッド・ジョンソン)。今は実家に戻り、傷ついた心を癒そうとしているけれど、SNSを開けば真剣に付き合い始めた二人の幸せな様子を見ることになり、さらに傷つくばかり。友人の個展に参加するも全然楽しめず一人トイレで泣いていたところ、型破りな魅力をもつヤズ(ヴィヴィアン・オパラ)に出会う。

お人好しなドムと破天荒なヤズは正反対の性格をもちながら意気投合。アートギャラリーを出て歩きはじめた二人は、小さい頃の夢などを語り合う。こうして始まった初対面同士のお散歩。元カノカップルとの再会や、親戚の家の電撃訪問など、波乱の一日を助け合って乗り越えるうちに、互いを知っていく。


オープニングから個性炸裂


最近では「イニシェリン島の精霊」がアカデミー賞候補になり話題を呼んだ、アート映画を製作、配給するサーチライト・ピクチャーズが手掛ける本作。コマーシャルなどを撮ってきたレイン・アレン・ミラー監督にとって長編デビュー作となるが、型にはまらずミラー監督の個性が存分に発揮された作品になっている。

それを印象付けるのが、様々なトイレをまたいで映し出していくオープニング。落書きだらけのトイレで喧嘩する男たちや、パステルカラーのトイレでおむつ替えをする親子、セルフィ―に夢中な女子たちなど長回しで映し出していき、それぞれの人生を一瞬で語っていく。

そして辿り着くのが、元カノとの別れに納得がいかず、一人むせび泣くドムがいるトイレ。誰の目にもとまらない個室で失恋モードを爆発させていたドムが履くピンクのコンバースが、後に意気投合するヤズと出会うきっかけになるというのもキュート。