NHK総合の“夜ドラ”枠での放送が2年目に入った。1回当たり15分という短尺のドラマを平日に帯形式(月~木曜の夜10:45-11:00)で放送しており、まさに“朝ドラの夜バージョン”といった趣の“夜ドラ”。2022年4月にスタートして以降、「作りたい女と食べたい女」(2022年)、「ワタシってサバサバしてるから」(2023年)「超人間要塞ヒロシ戦記」(2023年)などの意欲作を続々と放送し、その存在感を強めつつある。今回はそんな“夜ドラ”の編集長を務めるNHKクリエイターセンター・渡邊悟チーフ・リード、NHKメディア編成センター・土屋勝裕チーフ・リード、NHKメディア編成センター・松田彩氏にインタビュー。“夜ドラ”編成の経緯や、あえて少々半端な“夜10時45分”から放送している理由、1年間の振り返りや今後の展望などについて伺った。
“夜ドラ”の発足は2022年4月。テレビ離れが顕著であるとされていた若年層に向けたアプローチのひとつであり、2018年から週1回30分の作品を放送していた“よるドラ”を拡張する形での編成だった。
しかしながら、改定前の“よるドラ”とて、「だから私は推しました」(2019年)、「いいね!光源氏くん」(2021年)、「恋せぬふたり」(2022年)などの話題作を生み出しており、一定のブランド化はできていたと思われる。あえて1回15分×週4回の帯枠で編成したのはなぜなのだろうか。
「若い人たちの間に“よるドラ”をより浸透させていくためには、“朝ドラ”のように帯にすることで、視聴を習慣にしてもらえるのではないか、という狙いがありました。また、最近では長いドラマは早送りで見る、という方も増えていますので、短尺の方が見てもらえるのではないだろうかと。あとは、もしリアルタイムでご視聴いただけなかったとしても、NHKプラスなどで見ていただけたらという思いもあります。スマホで通勤時間や休憩時間などの空いた時間に見ていただくために、15分という時間はやはりちょうどいいのではないかということです」(土屋氏)
また、“夜ドラ”の放送時間はちょっと半端な時間とも思える夜10時45分からの15分間だが、実はこの時間設定にも意味があるという。
「夜11時以降は就寝する人が多いため、“在宅していて起きている人の数”がガクッと減るんです。でも、それまではみんな、家に帰ってきてからお風呂に入ったり片付けしたりと落ち着かない。では、就寝時間が大体夜11時だとすると、その前の15分間というのが一番みんながリラックスしている時間帯であろうということになります」(土屋氏)
「NHK総合では夜9時から10時45分までを“大人の教養ゾーン”としていて、もうちょっと年齢層の高い人たちに『映像の世紀バタフライエフェクト』(毎週月曜夜10:00-10:45)のような見応えのある番組を提供しています。夜11時以降は若い人たちに見てもらいたいという中で、夜10時45分に習慣化して見てもらえるドラマがあると、以降の番組も引き続き見てもらえるのではないかと」(松田氏)
“夜ドラ”はメインターゲットに据えた若年層にリーチするため、企画段階から工夫を重ねてきた。例えば、既存漫画を原作にした作品が顕著に多いのもその一つだ。1作目の「卒業タイムリミット」(2022年)から2023年夏放送予定の「褒めるひと褒められるひと」までの12作品のうち、実に半数である6作品が漫画原作となっている。人気漫画をドラマ化する場合、原作ファンの多くはとりあえず見てみるだろうし、原作に触れてきていない人も“人気作の実写化”ということで「面白いかもしれない」と興味を持ちやすくなるだろう。
また、メインどころに若手俳優やアイドルを多数起用するなど、キャスティングにも特徴が見られる。ターゲット層に「この人が出演するなら見てみようか」と、視聴を動機付けるのが狙いだ。
「私が直接担当した『超人間要塞ヒロシ戦記』(2023年)では、元乃木坂46の高山一実さん、JO1の豆原一成さん、山之内すずさんといった、連続ドラマの経験は少なくてもネットで知名度の高い方をメイン級キャストとして起用しています。もちろん演技がお上手であることはこれまでの出演作を見て分かっていたのですが、ドラマの作り方からすると少し挑戦的にはなります。でも結果として、若いファンの方々にしっかりと反応していただきました」(渡邊氏)