店を出る時になり、カバンから財布を出そうとした颯は、家の鍵が無い事に気づく。「よく見失うんです。こういうの、昔から多くて…。この先、ちゃんとしたオトナになれるか、時々不安で」と、ダメな自分に不安を抱えている事を口にした。颯の悩みを黙って聞いていた貴之は、ゆっくり鍵を探すように彼に言い、颯の分も会計しに行った。
結局、鍵はポケットに入っていた。自分のドリンク代を返そうとする颯に、貴之は「学生さんに払わせるわけにはいかない」と言い、店のポイントカードと大きなハリネズミのキーホルダーを「今日、付き合ってもらったお礼」と渡した。鍵を失くしがちだと言った颯に、「少しでも鍵に存在感が出るように」という彼の優しさだった。
貴之は続けて「ボクもよくヌケていると言われますけど、何だかんだで社会人やってます。だからキミも、もっと気楽に。ね!」と励ましの言葉を伝え、颯は心が軽くなり、いつもより前向きな気持ちになった。そして、自分と同じようにどこかヌケているのに終始カッコよかった貴之の姿を思い出し、颯は貴之に好感を持った。
一方、貴之も、思った以上に楽しい時間が過ごせた事に満足し、颯を思いきって誘って良かった、また会いたい、と思いながら、帰途についた。が、渡した名刺に個人の連絡先を書くのを忘れた事に気づくのだった。
そして颯も、持っていたクーポンを使うのを忘れた事に気づいた。そもそもクーポンがあったから店に入ろうと思ったのに…。でも、そんなドジも今日は「まっ、いいか」と思える颯だった。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョン編集部
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