近年は配信で鑑賞できることも増えた舞台作品。興味はあるものの、物理的に劇場まで行くことができなかったり、心理的なハードルを感じている人にとっても、気軽に舞台にふれられる良き入り口となっている。そこで、人気の2.5次元舞台からオススメのタイトルをピックアップ。今回は、4月30日(日)より新作公演も控える「ミュージカル『刀剣乱舞』」シリーズより、観客の心を深くえぐった名作「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~」について紹介したい。(以下、ストーリーに関する記載を含みます)
ミュージカル『刀剣乱舞』(以下、『刀ミュ』)とは、刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞ONLINE」を原作としたミュージカル作品。2015年から続く人気シリーズで、毎回、さまざまな時代に送り込まれた刀剣男士が歴史を守るべく時間遡行軍と戦いを繰り広げる。
中でも本作「静かの海のパライソ」の舞台となるのは、島原の乱が起きた寛永14年。鶴丸国永役(岡宮来夢)を隊長に、大倶利伽羅(牧島輝)、浦島虎徹(糸川耀士郎)、日向正宗(石橋弘毅)、豊前江(立花裕大)、松井江(笹森裕貴)の六振が、“江戸時代最大の悲劇”とも称される島原の乱に巻き込まれていく。
原作を忠実に再現したキャラクターこそが2.5次元舞台の魅力だが、もはやそれは大前提。『刀ミュ』が愛される理由は再現性だけにとどまらない。何がこんなにも観る者の心を震わせ虜にするのか。その魅力を、本作をベースに解説する。
名だたる刀剣が戦士へと姿を変えた刀剣男士。その設定からファンタジー色が強いようにも受け取られるが、ストーリーそのものは実に歴史に忠実だ。本作で言えば、厳しい弾圧を受けていたキリシタンと、悪政に苦しめられてきた農民たち、そして徳川への恨みを抱く豊臣家臣の生き残りが蜂起し、原城へ籠城。幕府を相手に善戦するが、奮闘虚しく、やがて追いつめられていくまでをシビアに描いている。
その上で、フィクションならではの大胆なアイデアを盛り込み、「実はこんなことがあったのかもしれない」と思わせる独自のワールドを展開していくのが『刀ミュ』の面白さ。本作でいえば、天草四郎が最大のポイントだ。37000人の民衆を率いて幕府に挑んだ16歳の総大将は何者だったのか。すべての決着がついたとき、その鮮やかなシナリオに思わずひれ伏すことだろう。
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