TVアニメ「天国大魔境」(毎週土曜夜10:00-10:30ほか、TOKYO MXほか/ディズニープラスで定額制見放題独占配信)の第5話が4月29日に放送・配信された。第5話では、マル(CV:佐藤元)のキルコ(CV:千本木彩花)と出会うまでの過去が明かされた他、学園ではトキオ(CV:山村響)ら子どもたちがタラオの死を悲しむ一方、園長(CV:磯辺万沙子)らは火葬したタラオの遺体から謎の物体が見つかり狼狽する場面も。マルのつらい過去や学園サイドの不気味さが描かれる中で、時折挟み込まれるコミカルなシーンが物語に少なくない効果を与えている。(以下、ネタバレがあります)
同作は、「月刊アフタヌーン」(講談社)で2018年から連載されている石黒正数による人気漫画が原作。連載開始直後から話題を集め、2018年12月には異例の速さで「このマンガがすごい!2019」オトコ編第1位にランクインした話題作で、原作ファンにとって待望のアニメ化となる。
第5話で、東京に戻ってきたマルとキルコ。ねぐらとしたマンションの一室で、キルコはマルに何度目かの“キルコと出会うまでの経緯”を語らせる。マルは、身寄りのない子どもたちと一緒に暮らしていると、ある日やってきたミクラに引き取られたという。その後、一人で買い出しに出ていたキルコがマンションに戻るとマルの姿がなく、キルコはパニックに陥る。外に出てマルの名前を大声で呼んでいると、マルが隣の部屋から慌てて顔を出す。キルコは思った以上に恐慌する自分に混乱しつつ、マルの存在の大きさを痛感する。
一方、学園ではタラオが病死し、トキオらは涙を流しながらタラオの遺体に花を手向けてお別れする。研究者がタラオの死因となった病について「あらゆる免疫を備えて作られたが故に発症したものなら、全ての子どもたちに発病の可能性がある」と見解を述べると、園長は「それは困ります!“お迎えの日”だけは変更できないんです。それまでに病気の正体と治療を解明してください」と指示。そんな中、火葬したタラオの遺体から謎の物体が現れ、園長らは「何ですか、これは…?」と騒然となった。
物語では、明かされていなかった情報が少しずつ明かされていく一方、深まる謎のグロさや怪しさは一層色濃くなっていく。そんな不気味な展開の中で、重要な役割を担っているのが毎話必ず差し込まれているコミカルなシーンだ。第5話では、「特別惚れっぽいわけでもないんだね」と評するキルコにマルが「どういう意味だよ!」とツッコむところや、車いすを全速力で押される園長の慌てる姿など、思わずくすりとさせられる場面が描かれているのだが、これらのコミカルなシーンは注視すると絶妙な頻度で差し込まれており、作品を暗くなり過ぎないような役割を果たしている。
そもそも、未曾有の大災害から15年後という荒廃した過酷な世界観に加え、ヒルコというおぞましい生物の存在、闇が深過ぎる学園など、暗い要素が満載なのだが、そんな中でコミカルなシーンをエッセンス的に配することで、見る者の気持ちをすくい上げつつ軽快なテンポを生み、さらには過酷な状況でも変わらず“生きて”いる人間の強さをも醸すという、たくさんの効果を与えている。
ふとしたところで描かれるマルとトキオのユルい掛け合いや、お堅いイメージの園長のかわいらしい一面など、今後も時折差し込まれるコミカルなシーンに注目したい。
◆文=原田健
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