2023/05/07 19:30 配信
好きな人を追いかけ続けることこそが、恋の醍醐味だ。「夜は短し歩けよ乙女(角川文庫)」(森見登美彦/KADOKAWA)は、キュートでポップな初恋ファンタジー小説。四季折々の京都を舞台に繰り広げられる男女の恋愛模様は、私たちをぽかぽかと温かい気持ちにさせてくれる。
黒髪の乙女にひそかに想いを寄せる先輩は、京都のいたるところで彼女の姿を追い求める。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す先輩に、彼女は天真爛漫な笑みをもって「あ!先輩、奇遇ですねえ!」と答え続ける。後半にはまるでコロナ禍を予言したかのような場面も。2人を待ち受ける珍事件の数々、そして運命の大転回から目が離せない。読み終えた時、思わず「恋がしたい」と、そう思ってしまうことだろう。
誰のことも信じられないような気分になった時、ぜひとも読んでほしいのが「エミリの小さな包丁(角川文庫)」(森沢明夫/KADOKAWA)。人の限りない優しさと心の再生を描くこの温かな物語を読めば、きっと「もう一度誰かを信じてみようかな」と思えてくる。
恋人に騙され、職業もお金も、居場所さえも失った25歳のエミリは、藁にもすがる思いで10年以上連絡を取っていなかった祖父の家へ転がり込む。淡々と包丁を研ぎ、食事を仕度する祖父の姿を見ているうちに、人間不信に陥っていたエミリの心に少しずつ変化が生じていく。そんな変化を追ううちに、気づけば、涙がこぼれそうになる。おじいちゃんのおいしい料理と不器用な優しさが、きっとあなたの胸にも沁みてくるに違いない。
「総理にされた男(宝島社文庫)」(中山七里/宝島社)は、首相と瓜二つの売れない役者・加納慎策がひょんなことから首相の「替え玉」を頼まれ、政界を動かしていく痛快なエンターテインメント小説だ。
現実社会の問題を投影したストーリーと、その問題の裏に隠された政治や経済のからくりは、最後まで読み手を飽きさせない。そして何より心揺さぶられるのは、首相になりきった慎策が理想の政治を目指してある大英断を下し、国民をも動かしていく驚きのラスト。「国民のための政治とは何か?」この小説が、そんな漠然とした疑問について考える糸口になるのは間違いないだろう。
人間はほんのひとつのきっかけで変わってしまうものなのかもしれない。「青の炎(角川文庫)」(貴志祐介/KADOKAWA)は、前途ある少年の悲劇を描き出す、あまりにも切ないミステリーだ。
17歳の少年・秀一は母と妹と三人で穏やかに暮らしていた。だが、母の元夫・曾根が家に居座るようになってから、平和だった家庭は一変。曾根は傍若無人に振る舞い、母ばかりか妹にまで暴行を働こうとする。やがて、警察や法律では問題が解決できないと悟った秀一は、自らの手で曾根を殺害する決意を固め……。
読後、しばらく他のことが手につかないくらい強い余韻が残る。あなたの心もきっと強く揺さぶられるに違いないだろう。
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