コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、殺し屋専用の高級ホテルを舞台に訪れる者たちのさまざまな人間模様を描く『ホテル・インヒューマンズ』をピックアップ。
webマンガサイト「サンデーうぇぶり」(小学館)にて連載中の本作。作者の田島青さんが3月10日に第2・3話「ダイイング・サービス」を自身のTwitterに投稿したところ、殺し屋の夫とその妻の関係性を描いた物語が話題を集め、1.6万以上の「いいね」が寄せられ反響を呼んでいる。この記事では田島青さんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
殺し屋として“完璧”を求める男・加瀬は、妻・あさみにさえ自身の仕事のことを隠して生活していた。完璧な日々を過ごす加瀬だが、いつも不意を突いてくるあさみの行動だけは読むことができずにいた。
ある日、依頼された復讐代行殺人を実行するため、殺し屋専用の高級ホテル「ホテル・イン・ヒューマンズ」に滞在する加瀬。このホテルには、食事や娯楽のほか武器手配や身元詐称、完璧な死体処理まで殺し屋のどんな要望にも応えるコンシェルジュが存在していた。加瀬は、麻薬売買の元締めであり今回のターゲットである嶋本と瓜二つの姿に変装すると、計画通りに事務所を訪れ、嶋本を殺害する。
任務を終えて外に出た加瀬は、変装したままの姿にも関わらず突然背後から「加瀬くん?」と声をかけられる。驚き振り返ると、そこにはケーキの箱を手にしたあさみが立っていた。しかし、顔を合わせて早々に人違いだったと謝り、去っていくあさみ。焦った加瀬だったが、その姿を見て今日が10年目の結婚記念日だと思い出し、コンシェルジュに頼み事をしようと電話をかける。そこに嶋本に恨みを持った若者が突如現れ、加瀬はナイフで胸元を刺されてしまう。しばらくしてコンシェルジュが駆けつけるも加瀬は「俺を殺してくれ」と願い出て…。
完璧主義の殺し屋と夫の素性を知らない妻の物語を描いた本作。続編となる第3話では、コンシェルジュによる“ダイイング・サービス”を実行した加瀬があさみに残した手紙の内容が明かされ、夫婦愛を感じさせるラストシーンが話題を集めた。Twitter上では「こんなに泣けるとは思わなかった」「不覚にも泣いた」「世界観と絵がとにかく綺麗」「心に染みる」「こんなの泣くに決まってる」など読者からのコメントが寄せられ反響を呼んでいる。
――『ホテル・インヒューマンズ』はどのように生まれた作品ですか?
担当さんとの連載コンペ案の打ち合わせをしていたのですが、持っていった案がどれもうまくいきそうになく行き詰まって窓の外をみた時に、隣のビルの暖色の光が目に入って、そういえばホテルの話を描いてみたかったことを思い出しました。(わたしはそれまでホテルに泊まった経験がほとんどなかったので、ホテルは遠い憧れの場所という存在でした。)
ひとつの場所に、それぞれの理由を抱いてさまざまな人が泊まりに来る、“普通の”ホテル群像劇はどうかなと考えていたのですが、担当さんから「ホテルと殺し屋はどうですか?」と提案があって。華やかなホテルと死という異なるモチーフが面白そうだなと思い、そこから話が始まりました。
――第2・3話(「ダイイング・サービス」の回)で描かれた“完璧主義な殺し屋”・加瀬とその妻であるあさみ、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
恋をした完璧主義の殺し屋の話を描こう、となって、話を作りながらできていったキャラクターです。最初は「完璧な人」というキャラクターがどういうことなのか、わたしにはあまり想像がつかなかったのですが、「何事も完璧にやろうとする(やらないと気が済まない)人」なら理解できるなと思い、そういう人に対して「想定外の行動を取る人」というバランスでできた2人です。加瀬が動揺すると、前髪がはらりと落ちてくるところがお気に入りです。
――Twitterで第2・3話を公開後、1.6万以上の「いいね」が寄せられ話題を集めています。今回の反響について田島青さんの率直なご感想をお聞かせください。
純粋にびっくりしていて、そして嬉しいです。この話はアプリ掲載当初からあたたかいコメントを特にたくさんいただけて、自分ではそんな風に反応をいただける話だと本当に思っていなかったので、Twitterでもいいねやリプライをたくさんいただけてとても驚きつつ、ありがたいです。
印象的だったのは、物語そのものへの反応とは少しずれるのですが、何人かの方がALT(代替テキスト)について触れてくださっていたことです。Twitterに漫画や画像をアップする際はできるだけALTを付けるようにしているのですが、まだまだ普及していないですし、漫画という媒体を文章だけで表すことの難しさに毎回直面していますが、これからもたくさんの方に届けられるようにできることは全部したいです。
――毎話、さまざまに交錯する人間模様を描き読者の心を揺さぶる本作ですが、田島青さんが本作を描く上でこだわっている点や「ここを見てほしい」というポイントがありましたら教えてください。
物語をどう受け取ってもらえるか、どう感じてもらえるかは読者の方ひとりひとり異なると思うので、ここを見てほしいというポイントは正直あまりないかもしれません。
こだわっているところは、読んでいてストレスが少ないといいなというところで、「状況(何が起こっているのか)が分からない」ということができるだけ無いことを目指して最後まで調整しています。
――本作の中で特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?
ダイイング・サービス(第2・3話)の「雨が降ったからあたしに会えた。」のカットがお気に入りです。
リメンバー・ミー(第7・9話)の最後の生朗の「…死なせたくないよ。生きたがってる人のこと。」、その後の沙羅の「あったじゃないですか。あなたのやりがい。」のカットも、それぞれのキャラクターらしさが出せたかなと思っています。特にこの沙羅は、実際に描いたことで沙羅はこんな表情をするんだなと知ることができました。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
『ホテル・インヒューマンズ』を読んでくださっている読者のみなさま、ありがとうございます。世の中にたくさんの作品があるなかでこの物語を見つけてもらえたことがありがたいですし、本作を読んでくださった時間が存在することが本当にうれしいです。連載では新しい局面に突入するので、これからも楽しみにしていただけるようにがんばります!
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