声優、YouTuber、モデル、コスプレイヤー、そして2022年7月からは自身名義での音楽活動も。「マルチタレント」を掲げ、さまざまなジャンルで活躍する夜道雪(よみちゆき)のコラム連載、「夜道 雪のBlowin' the Night wind!(夜風に吹かれて!)」がスタート! 地元・北海道から上京し、現在の「表現者・夜道雪」が生まれるまでの道のりを、「夜道節」で綴っていきます。
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突然ですが、皆さんは“偏見の目”で見られたことがあるだろうか?
何を隠そう、私は昔から偏見の目で見られる事が多い。
「ヤンチャそう」と言われる時もあれば「メンヘラそう」と真逆のことを言われる時もある。
「男遊び激しそう」や「性格悪そう」、果ては「独り言多そう」など、枚挙にいとまがない。
それほど人によって夜道雪への印象も違うのだなあと思う。
まあ実際、私も心のうちを大っぴらに話すことはそうそうないし、YouTubeや Twitter上では面白いやつだと思われたくて多少キャラを作ることもあるから、素性がわかりにくいところは致し方ない部分もあるだろう。
今でこそこうして冷静に受け入れているものの、うら若き10代の乙女の頃は、そういった偏見に
「全然そんな事ないのに!!!」
と悲嘆に暮れる毎日を過ごしていたのだ。
仕事の現場に行くと、ほぼ毎回のように…
「あれ?夜道さんって実際に会うと、思ったより大人しい方なんですね。TwitterやYouTubeを見てるともっとこう…ヤンチャな方だと思っていました」
「いや〜よく言われるんです、フヒヒ」
という感じのやりとりがあった。
その場では笑顔を振りまきながら、そのたびに10代の頃の私は失意のどん底に叩き落とされていた。
私ってそんなにヤンチャなイメージあるんだな、
“夜道雪らしく”もっと明るく元気に振る舞った方がいいのかな、と。
確かに、ネット弁慶な私はSNS上で見れば口達者な子に見えるかもしれない。
しかしその実は、太っていて地味だった小学校時代、いじめられて不登校だった中学校時代、青春のセの字もなく中退した高校時代を持ち、俗に言う『陰キャ・コミュ障』を地でいく“お世辞にも明るいとは言えない”人間なのだ。
私は、自ら作り上げた明朗快活な表向きのイメージと、陰々滅々な本当の自分とのギャップに挟まれ、悩んだ。
また、私は高校生の頃からバイクに乗り始めたのだが、すると周囲から早速『ヤンキー』というレッテルを貼られてしまった。確かに、若い頃の私は(今思い返せば)若気の至りで、たびたび不用意な発言をして炎上してしまったことがあるが、それは仕方ないにしてもバイクに乗っただけでヤンキーだなんてあんまりだ。
しかし、レッテルはこれだけでは終わらなかった。ヤンキー扱いからやがて「付き合ってる男の影響でバイクに乗り始めた女」へと変化したのだ。
世の中の女性ライダーの方々がバイクに乗り始めた理由やきっかけはきっとさまざまだと思うが、私がバイクに乗っていたのは「単にひとりぼっちだったから」にすぎない。
孤独な私がひととき現実を忘れたり、新しい世界を見つけたりする道具は、バイクしかなかったのだ。
だから、それを『ヤンキー』だとか『男の影響』だとか言われてしまった日には、偏見に加え根も葉もない噂によって私を歪曲された気さえしてしまい、酷く落ち込んでしまうのも無理はないだろう。
だが、ヤンチャそうという第一印象のおかげか、私としては普通に過ごしただけでも、会う人のほとんどが最終的に『夜道雪は普通な人』と評してくれると気づいた。いわゆるギャップというものだろうか。
例えるなら、世紀末系モヒカンヘアの男性が、雨の日、道端に捨てられていた子犬に傘を差して優しく話しかけている場面を見たときのような…
さらには、それだけに留まらず、
『優しい』『努力家』『仕事熱心』
という勿体ないくらいのお言葉をいただくことも増えた。
仮にお世辞だとしても、そう言っていただけるのは本当に嬉しくてありがたいことである。
そして、私自身の生き方も変わった。
『ヤンチャそう』というイメージはもはや変え難いものかもしれないが、1人でも多くの方にそのイメージを払拭してもらえるよう、何事にも真摯かつ熱心に、ひたむきに努力するようになった。
どんな風に思われていたとしても、まっすぐに誠実に積み重ねれば何かが変わるかもしれない。マイナスイメージもマイナスばかりではなくて、少し目線や考え方を変えればプラスにだってなり得るのだ。
そう思えるようになってから、人生少し楽しく、優しく感じられるようになった。
それにしても改めて考えてみると、これまでの人生で私を苦しめてきたはずの偏見は、今の私の礎になっている。
10代の私よ、偏見も案外悪いことばかりではないぞ。
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