MCUフェーズ5の開幕を飾るにふさわしい、“小さな世界”の壮大なストーリー<アントマン&ワスプ:クアントマニア>

2023/05/23 06:10 配信

映画 動画 レビュー

「アントマン&ワスプ:クアントマニア」は、5月17日から配信中(C) 2023 Marvel

「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」フェーズ5の第1弾を飾った映画「アントマン&ワスプ:クアントマニア」が5月17日より配信開始。身長1.5cmの最小ヒーローである“アントマン”ことスコット・ラング(ポール・ラッド)は、縮小だけでなく巨大化もできるため、地元では知られる存在だったが、「アベンジャーズ/エンドゲーム」でアベンジャーズ入りしたため、いまや世界中の誰もが知るヒーローとなった。今作ではスコットだけでなく、ワスプことホープ(エバンジェリン・リリー)やアントマン・スーツの開発者であるハンク・ピム(マイケル・ダグラス)、その妻のジャネット(ミシェル・ファイファー)、そしてスコットの娘・キャシー(キャスリン・ニュートン)が、ミクロよりも小さな量子世界へと引きずり込まれ、最凶の征服者と対峙(たいじ)。さすがはMCUフェーズ5の開幕を飾るにふさわしい、小さな世界を舞台にした壮大なストーリーで、見どころてんこ盛りの満腹感たっぷりな作品だった。(以下、ネタバレがあります)

前科者のバツイチ男が世界を救う最小のヒーロー“アントマン”に


スコット・ラングがアントマンとなる経緯は、実にユニークなもの。彼はもともととある会社のエンジニアだったが、自社の不正を内部告発するも失敗。そのため、セキュリティ万全の自社に忍び込み、客から騙し取った金を全て返金するという“泥棒”行為を働いたため、3年間服役していた。この潜入能力を元S.H.I.E.L.D.のエージェントであり、初代アントマンである科学者のハンク・ピムに見込まれ、半ば強制的にアントマンに任命されたのだ。しかし、当時のスコットは逮捕を機に妻と離婚し、最愛の娘キャシーとも離れ離れ。前科者ゆえにサーティワンでのアルバイトも即刻クビになるという最悪の状態で、ヒーローとはほど遠い存在だった。

養育費が払えなければ、キャシーとの面会が許されなかったスコットは、やむなくムショ仲間と泥棒稼業に復帰し、ピム宅でアントマン・スーツと出合う。だが、実はこれは全てピムの計画だった。ピムは高い潜入能力を持つスコットにアントマンを継承させようとしていたが、自分が継ぎたかったピムの娘・ホープは反発。そのため、しばらくはぎくしゃくした関係が続いたが、量子研究やアントマン・スーツを金儲けに悪用しようとしていたピムの元助手ダレンとの戦いが、3人の関係性を深めていった。しかし、その後3作の映画を通して、スコットとピム父娘が絶縁状態になったり、スコットがFBI監視の下、2年間自宅軟禁状態になったこともあったが、別れた妻と新しい夫との関係は良好で娘のキャシーとも仲良くやっていた。

すっかり成長したスコットの娘・ジャネット


「アントマン&ワスプ:クアントマニア」では、9歳だったキャシーがすっかり大人に成長。正義感が強く、弱者のために警察にやっかいになるところは父親そっくり。スコットとの関係を修復したピムやホープ、そして「アントマン&ワスプ」で量子世界から帰還したジャネットとは、まるで親戚のような関係に。また、スコットとジャネットは知らなかったが、キャシーはサノスの“指パッチン”によって人類の半分が失われていた5年間に量子科学に没頭し、原子未満(サブアトミック)のハッブル望遠鏡を作り出すほどに能力を高めていた。しかし、これが新たな騒動の発端となる。ジャネットが声を荒げた次の瞬間、望遠鏡から閃光が放たれ、部屋にいたアリも含めて、その場にした5人全員が量子世界へ引きずり込まれてしまうのだった。

驚くべきことに量子世界にも知的生命体がおり、未来型巨大都市が建設されていた。生命体もヒト型だけでなく、軟体動物型、昆虫型、メカ型がおり、多種の生命体が一堂に会しているところは「スター・ウォーズ」を彷彿とさせる。だが、野菜型生命体や生きた建物もいるところはマーベルならではであろう。一見、魅力的な世界だが、この世界にも傍若無人な征服者がおり、故郷を破壊された人々は肩を寄せ合って暮らしていた。そして、この世界に30年いたジャネットは、征服者をよく知っているらしい。