今回、「ガラスの動物園」でご一緒させて頂いた上村さんはじめ、とても仲の良いマッシーこと、眞島さんとの夫婦役、体当たりしても受け止めてくださるという安心感があります!
私が演じる戦争に息子を送り出した母親・キャリーという役的にも、お互いに静かにリングに上がり、静かに殴り合い、静かに血の涙を流しているようなイメージのある作品だったので、みんなで緻密に役を掘り下げ、板の上では、思い切りぶつけられるように稽古を重ねていけたらと思っています。
ひとたび戦争となれば、人を殺す事がまかり通り、そして名誉になる。戦死しても英雄となる。名誉とは英雄とはなにか、今一度考えるべき事だな、と台本を読み強く思いました。戦争というものに対して、キプリング家の中でも意見が違う、きっと観てくださった方々も色んな意見があると思います。正しいや間違いという事でなく、一緒に考えてみるきっかけになれば良いなと思います。
舞台を何度も拝見した事がある上村さんからの演出を受けられる事に、稽古前の今から緊張とワクワクで興奮しております。今回、僕がやらせていただくジョンという役は、戦地に出て戦う事に憧れを持つ青年です。家族からのプレッシャーを感じながら、それでも戦地へ行き、家を出たいと強く思っています。
ジョンは本作のテーマである親子愛や、戦時中の価値観のぶつかりを担うとても重要な役どころだと感じております。それだけの大役なので、見ていただく皆さまにジョンという人間を強く印象づけられるように、この役を大切に演じていきたいなと思います。皆さまの心に残るような舞台になるよう全力で努めますので、是非ご覧ください。
戯曲「マイ・ボーイ・ジャック」は「ジャングル・ブック」を生み出した作家、ラドヤード・キプリングが残した詩を基にうまれた、家族の物語です。長女を病で失い、息子を戦争で失ったラドヤード・キプリング。自然的な死と悲人道的な死を経験したキプリングの作品は、読めば読むほど、そこにはジャックの死以外にも、長女・ジョセフィンへの思いも複雑に絡んでいるように思いました。
私の演じる、次女・エルシーは姉と弟を亡くしています。大人と子供の狭間の少女は、父親を愛する気持ちと戦争を肯定した父親への不信感に大きく揺れたはずです。エルシーのせりふひとつひとつは誰よりも素直で、その素直さが胸に刺さります。そんなエルシーを、これから稽古で見つけていければと思います。