ミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァンという、2023年のアカデミー賞を沸かせた2人が出演することでも話題のドラマ「アメリカン・ボーン・チャイニーズ 僕らの西遊記」が、5月24日に全8話一挙配信された。ごく平凡な高校生を主人公に、現代と中国神話がミックスされた奇想天外なストーリー。その始まりをレビューする。(以下、ネタバレを含みます)
同ドラマは、ジーン・ルエン・ヤンのグラフィックノベルが原作で、中国系アメリカ人の高校生ジン・ワン(ベン・ワン)が主人公。ごく平凡な生活を送っていたが、新しくクラスメイトとなった中国人のウェイチェン(ジミー・リュー)と出会ったことで一変してしまう。
実はウェイチェンは、中国神話に出てくる神の息子。その神とは、日本でも知られる「西遊記」に登場する孫悟空だ。
いつのまにか中国神話の神々の戦いに巻き込まれていくという破天荒な物語が展開し、やがてジンは、自分のアイデンティティについて考えるようになるというもの。
その物語を支えるのが、エブエブこと映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(2022年)で、アジア系として史上初のアカデミー賞主演女優賞に輝いたミシェル・ヨーと、助演男優賞に輝いたキー・ホイ・クァン。さらに同作で惜しくも受賞とはならなかったが助演女優賞にノミネートされたステファニー・スーもゲスト出演し、オスカーを席巻した実力派アジア系俳優たちが再び顔をそろえるのも注目されている。
第1話は、ジンとウェイチェンの出会いが描かれる。コミック好き仲間の友人との付き合いばかりではなく、サッカーに取り組んだりして、新学期からはレベルアップしたいと願うジン。そんな中、校長に転校生のウェイチェンを同じ中国人同士ということで面倒を見るよう頼まれてしまう。
ジンいわく「自己肯定感が高い」ウェイチェンに翻弄(ほんろう)されつつ、翌日、自分の身に起きた出来事がミーム動画としてすぐに拡散されていることを知るジン。そのままサッカー部の選抜テストに挑むが、ちょくちょくからかってきていた相手が動画も流した本人ではないかと疑い、テストをきっかけに蹴ろうとしてしまい、入部を拒否された。
背景に、根深くある人種差別が見え隠れする本作。移民してきた両親の元、アメリカで育ったジンは中国語が苦手だ。心の中でもがいている姿から、多様性社会といわれる現代でも悩みが尽きないことが分かる。
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