書店に着き、いったん蒼真と別れ、傘を探して売り場を歩いていた颯は、三間と偶然出会った。憧れの三間に会えて、一気にテンションが上がる。本が好きで書店によく来る、と言った三間に共通点を見いだして嬉しくなった颯は、彼にオススメの本を尋ねた。
三間が勧めたのは、五十嵐元晴の小説。五十嵐は三間の旧友だが、それは言わずに颯に本を手渡した。実は、颯は五十嵐の大ファンで、この作品も含めすべての作品を読んでいる、と三間に告げた。そして、いかに五十嵐が素晴らしいかをアツく語り始めて止まらなくなってしまう。我に返った颯は「オタクって思われたかも…」と、恥ずかしい気持ちになった。しかし、三間も五十嵐のファンだと知り、「憧れの三間さんが、オレが尊敬している五十嵐先生を好き!」という嬉しい繋がりに大興奮する。そんな颯を見て、三間は小動物カフェでの姿を思い出し、「颯くん好きなモノが絡むと生き生きするな」と微笑ましい気持ちになった。
そこへ用事を済ませた蒼真がやって来た。タイプの違う颯と蒼真が仲良くしているのを見て、三間は五十嵐との再会を思い出し、「また会ったのが縁だとしたら、この縁は悔いの無いものにしないと」と思うのだった。3人が話しているところに店員が来て、「お買い上げの品、お忘れです」と蒼真に袋を手渡した。いつものように自分のドジにクスクス笑う蒼真を見て、颯は傘を探しにきた事を思い出す。そして、それを聞いた三間も「傘、どうしたっけ…」……ドジの大連鎖。3人は笑うしかなかった。
颯がレジにやって来ると、ロン毛の男性が颯の傘を「忘れ物ですかね」と店員に渡そうとしているところだった。「それ、僕のです!」と駆け寄った颯は、床でスベって転びそうに…。だが、その男性に支えられ間一髪で転ぶのを回避した。男性は颯に「靴、大丈夫?」と尋ね、「靴ベラ使う?」とバッグから長い靴ベラを取り出した。持ち歩くサイズではない靴ベラに颯はビックリするが、「でも、スマートな対応…カッコいい~」と、憧れる人物が増えたのだった。この靴ベラ男性が、颯が尊敬する五十嵐元晴だという事を、彼はまだ知らない。
五十嵐が靴ベラを持っていた理由―それは、ホテルを出る時に傘と間違えて持って来てしまったのだった。やはり五十嵐も立派な“クールドジ男子”だ。
一方、颯の傘が無事見つかり、店を出る事になった3人。また休日に会う約束をして、三間は傘立てから傘を取り出した。それは、さっき颯が蒼真に勧められたと勘違いした子供用のピンクの傘だった。恥ずかしがる素振りも無く、傘を広げて帰る三間を見て「あの傘、オトナが使ってもいいんだ」と颯は思い、蒼真は「三間さんはカワイイ物が好きなのかぁ」と、間違った“三間知識”をインプットするのだった。真相は、三間が自分の傘を会社に忘れ、姪に届ける為に持っていた傘をかわりに使っただけなのだが…。
颯は、傘を忘れて最悪だと思ったが、そのおかげで蒼真と一緒に書店に行けて、そこで三間にも会え、“何かカッコいい人”にも会えて、ドジをしたからこそ、こんな楽しい1日を過ごせたのだ、と前向きに捉え、気分が良くなった。颯のネガティブ思考は、彼らとの出会いによって、少しずつ改善されているようだ。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
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