コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、漫画家の猪原秀陽さんの『しあわせ』という1作だ。
猪原さんといえばイタズラが大好きな動物3人組が登場する漫画『We're バッド・アニマルズ』の作者。動物をモチーフにした作風が特徴で、5月1日に自身のTwitterで公開した『しあわせ』でも“クマ化した人間”が大暴れしている。突飛な内容が話題になり、同作は1.1万件の「いいね!」を獲得。作者の猪原さんに、『しあわせ』を描いた経緯について話を伺った。
日々の会社勤めでメンタルがすり減っていた会社員の男性は、上司にお叱りを受けていた。残りのHPが「3」から徐々に減っていき、怒りの感情も膨れ上がる中、ついにHPが「0」に。途端に会社員の体が爆発して煙が立ち込める。
そして煙の中から現れたのが“クマ化した会社員の男性”。サングラスをかけ、ネクタイにワイシャツ姿の彼は腕を振り回して「バカ」や「アホ」と暴言を吐きながら走り始め、一目散にバッティングセンターに向かう。
相変わらず暴言を吐きながらバッティングを堪能し、次に向かったのはカラオケ。意味不明な言葉で歌を熱唱しては、机の上に開いたノートに汚い言葉を殴り書き。それからも「海の中で暴れる」「サンドバッグを殴る」という奇行を続け、最後は大量のビールを飲んで寝てしまう。
翌日、「スッキリした~」と言いながら起床した男性は人間の姿に。「これからどうしよう」という言葉をもらすも、「まあどうにでもなるか」と楽観視する男性。彼が「何事も無かったように出勤したらウケるかな」と思いながら掃除機をかけ始める中、会社では「アイツ発狂してやめたらしいよ」と彼を噂する2人の同僚の姿が。そして、その同僚の残りHPというと…。
“クマ化した男性の暴れっぷり”が人気を得たようで、「可能なら真似してみたい」「『しあわせ』というタイトルが意味深でいいね!」「見ていて爽快な気分になった」といった声が多数上がっていた。
――「しあわせ」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
感情をきちんと感じないで無かったことにすると、心が大変なことになってしまうということを最近身にしみて実感して人に伝えたくて漫画にしました。
――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
怒りの感情を放出する表現を描く時に、辛い思いをしている人はあんまり過激な言葉を使わなそうなので、まずは自分自身を一番大切にして怒りを消化して欲しいなと思って過激な言葉をたくさん言わせました。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
車で海へ向かうシーンで、仲間が合流してくるところが気に入っています。辛い思いをした人の友達が何も言わずに付き合ってあげるというような雰囲気がうまく描けました。
――“ストレスが爆発してクマに変身する”というアイデアは、どのようなタイミングで思いついたのでしょうか?
当初は怒りが爆発して怖いモンスターに変身する予定だったのですが、ストーリーができたところで「これって笑えないかも?」と考え直し、かわいいキャラクターに変更することにしました。いつも自分が描いているバッド・アニマルズというキャラクターたちは、よく汚い言葉を使っているので、彼らを起用しました。
――終始続く“クマに変身して汚い言葉を連呼しまくる”という描写に笑ってしまいましたが、猪原さんもこのくらい感情が爆発したことはありますか?もしくは爆発させたい時はありますか?
人に悪意をぶつけられたら、できるだけその場で返すようにしてますが、過去の相手だったり現実的に難しい場合はノートなどによく感情を爆発させています!
また、1人の時は小学生が口にするような汚い言葉を日常的に口ずさんでいます。たまに都心などの街中で叫んでみたら、どうなるだろうと想像することがあります。
――作品の他にも“バッド・アニマルズ”の木彫りも出品されていますが、こちらは自作のものでしょうか? 作った経緯なども、ぜひ教えてください。
自分で作っています。個展をした時に、自分の漫画の雰囲気が出るような立体作品を作りたくて木彫りという形になりました。
――今後の展望や目標をお教えください。
読む人の考え方を変えてしまうようなすごい作品を作りたいと漠然と考えています。長編漫画を構想中です。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
私はよく漫画を描きながら自分で自分のネタに笑っちゃったりしています。読者の皆さんとおもしろいことを共有して、一緒に楽しんでいけたらと思っています。
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