シーズン6の第1話は「ツイスト・アンド・シャウト」、第2話が「エヴリバディズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド」なのだから、スタッフにビーヲタ(ビートルズの熱烈なファン)がいるのかなと想像がつくし、第18話など「グラマラス・ライフ」(シーラ・Eのヒット曲から取ったのだろう)である。と言ってもストーリーがノリノリの音楽風味というわけではなく、第1話などシアトルとしては異例のトルネードが発生して平和な日常が一変するという心が痛む物語だった。
個人的にコロラド州出身のロック・バンド、ザ・フレイの同名曲(2009年)を頭に浮かべつつ、見入ってしまった第7話の「ウィ・ビルド・ゼン・ウィ・ブレイク」は、物語の中心に位置するのが有色人種の青年。彼が母の誕生日に感謝を込めてケーキを作っていたところ、バターが足りないことに気が付いた。そこで買い物に行ったのだが、帰り道に白人警察官に呼び止められる。
そうした場合、「とにかく不審に思われるような動きはしない。おとなしく言いなりになること」が射殺されないためのほぼ唯一の道であろうし、彼もそれは心得ている。だが、一人の警察官が青年を押さえつけ、もう一人の警察官が銃を向ける。日本ではあり得ない、目を背けたくなる光景だ。彼は何もしていないのに…。そこに「ステーション19」の面々が登場して、解決を目指す。
友人と一緒に見て、後で意見交換するのも有益だろう。もちろんエンターテインメント作品なので、和やかなシーンも、ロマンティックなシーンもたっぷり含まれている。身を挺して日夜、任務にいそしむステーション19の皆さん(「消火する」ことだけが役割ではない)の健闘を心から祈りつつ、こちらの身も引き締めているのである。
◆文=原田和典
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