【漫画】家族に無関心だった亡き父…遺品をとおして父からの“愛”に触れる息子の姿に「ボロ泣き」「感傷に浸ってしまう」

2023/06/14 18:30 配信

芸能一般 インタビュー

父が遺した確かな“愛情”に涙…高野雀さんの『あいまいでよく見えない。』が話題画像提供/高野雀さん

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、作者・高野雀さんの『あいまいでよく見えない。』をピックアップ。

父親を亡くした青年が、遺品をとおして父との思い出と向き合う姿を描いた本作。作者である高野さんが5月5日にTwitterに投稿したところ、6.7万以上の「いいね」が寄せられ、話題を集めている。この記事では高野雀さんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。

携帯電話に遺された動画に映っていたものは…息子の感極まる姿に共感の声

『あいまいでよく見えない。』より画像提供/高野雀さん


父親を亡くした雄大は、父の遺品である携帯電話を持って友人の家を訪れる。遺影に使えそうな写真を探すため、データを取り出してほしいと考えていたのだった。心配する友人をよそに、雄大は「父親が死んだ時より推しの恋愛発覚の方がショックだったの、いくらなんでも非情すぎよな」と笑う。前の写真集で、推しが初めて見せる表情や目線に今までと違う“愛”を感じていたという雄大は、熱愛相手がカメラマンであることに納得しながらも嘆いていた。

自分の父については「何事にも無関心で趣味とかもなくて、こだわりのない仕事やって特に何も成し遂げずに死んだ」と言い切る雄大。父親としての一面しか知らなかったものの、家族で何かやるのも“しょうがなく”感が強かったことを思い返し、父にとって一体何が楽しかったんだろうと思いを巡らせていた。

友人のパソコンで父の携帯のデータを取り出し、中身を見ると解像度の低いデータが浮かび上がる。いくつかの動画も見つけ、再生してみると、カメラに優しい笑顔を向ける楽しそうな父の姿があった。「めっちゃ目付き“愛”じゃん」「親のいちゃつき見んの恥ずかしい」と照れる雄大だったが、音声を大きくしてみると実は動画を撮っていたのは幼い頃の雄大で…。

携帯電話に遺された過去の記録をとおして、父が注いでくれていた愛情と向き合う主人公の姿を描いた本作。Twitter上では「刺さりに刺さってボロ泣き」「ついつい感傷に浸ってしまう」「昨年父を亡くしたのでこういう話は沁みます」「愛の顔ってあるよね」「わたしは子供に何を残せるのかな」などのコメントや共感の声が寄せられ反響を呼んでいる。

見る人、見せる人によって変わる“その人の一面” 作者・高野雀さんが語る創作背景とこだわり

『あいまいでよく見えない。』より画像提供/高野雀さん


――『あいまいでよく見えない。』を創作したきっかけや理由があれば教えてください。

2023年に入って数カ月の間に、一方的に馴染みのある著名人や知人友人の訃報が続き、そういう年齢になったとはいえしんどいものがありました。

亡くなった知人のひとりは、SNSのアカウントのことは御家族誰も知らないと以前書いていて、じゃあ我々が知っていた知人の一面は知られないまま葬られてしまうんだな、でも我々もあの子が実際何をどう思っていたかなんかわからんよな、と思ったのがきっかけです。

――父の遺品である動画を見た雄大の感情描写が印象的な本作ですが、それぞれのキャラクターや設定はどのように生み出されたのでしょうか?

Twitter等で、猫とか犬とか文鳥とか物言わぬ動物と暮らしている人達の撮る写真を見ることが増え、これまで自分が直接見てきたのとは違う「一緒に暮らしている相手にだけ見せる親密さ」に満ちた表情をすることを知りました。部外者の自分が見て良いのかなと戸惑いつつも、こういうの人間同士でもあるよなと思ったことが元ネタです。

――本作を描く上でこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントがありましたら教えてください。

とにかくコミティアに間に合わせたい+コピーにするから4の倍数のページ数にする+トーン使いは最低限に、ぐらいしかこだわりがなく…すみません…。

――本作の中で特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?また創作中の思い出深いエピソードがあれば、理由と共に教えてください。

疫禍以前のライブの思い出ですが、モッシュピットでmall boyzの「higher」の「成し遂げて死ぬ」の部分を必死に合唱しているヤングの皆さんを見ていたら、そんな成し遂げなあかんか?成し遂げんでも生きていいし死ぬのだが…とお門違いの感想を抱いてしまったこと+入場待機列で前に居た見知らぬ若い男子が、親御さんへのふんわりした愚痴を言っていた記憶が引用されています。

――高野雀さんは本作以外にも、同人誌として発表した作品『ハンブレチヤ』を始め『世界は寒い』(祥伝社)、『しょうもないのうりょく』(竹書房)など、登場人物たちのセリフが現実に近いテンポで繰り広げられる“会話”が印象的な作品が多いですが、創作全般においてのこだわりや物語を創るうえで特に意識している点があればお教えください。

圧倒的な世界観で語るタイプの漫画でもないし、一人称で魅力ある展開と画面を作るのが苦手なのもあって、複数人での会話を軸に展開しているのだと思います。

こだわりはそんなにないと思いますが、「描く対象を舐めない」ように気を付けています。「こういう人はこういうものだ」と楽に決めつけると大体何かを見落とすことになるので…。私が描いているのは現実の人間ではなくキャラクターなのですが…。

――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

自分は「陰鬱ポエム漫画」と「のんきな低体温まんが」のどちらかを描いているんですが、のんきな方の漫画の新連載が夏頃には始まる予定です!始まらなかったらお察しください!お見せできるようがんばります。

あと、うちの家族が病気なもんで、健康で可能な方は献血と骨髄ドナー登録お待ちしています!