1997年公開のイギリス映画「フル・モンティ」。英国で大ヒットを飛ばし、英国アカデミー賞作品賞&主演男優賞(ロバート・カーライル)受賞、米アカデミー賞作曲賞を受賞した名作だ。同作のオリジナルキャスト6人が再集結、彼らを主人公とする全8話のコメディードラマ「フル・モンティ」が6月14日にディズニープラスのスターで一挙配信された。男性ストリップに臨んだハチャメチャな“ヤツら”に、まさか再び出会うことができるとは…。今回、幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が本作を鑑賞。独自の視点で見どころを紹介する。(以下、ネタバレを含みます)
今作の舞台はもちろんイギリスの都市・シェフィールド。街としては相変わらず“斜陽”という感じだが、それでも彼らはこの地を愛し、面白おかしく暮らしている。そして今回、とある友人のトラブルのために一肌脱ごうと、あらためて一致団結することになった。
主人公のガズに扮するのは、おなじみの名優ロバート・カーライル。息子のネイサン(ウィリアム・スネイプ)はすっかり大きくなり、さらに年頃の娘・デスティニー(タリサ・ウィング)が新キャラクターとして登場してさらなる新鮮味を加える。このデスティニー、喫煙はするわ万引きはするわ車両は盗むわという不良娘なのだが、妙に人懐っこいところがあり、諸事情あってガズと一緒に暮らしてはいないけれども、どんなクラスメートの男子よりも父親のことが大好きなのだ。
ガズを囲む面々は、デイヴ役のマーク・アディ、ジェラルド役のトム・ウィルキンソン、ロンパー役のスティーブ・ヒューイソン、ホース役のポール・バーバー、ガイ役のヒューゴ・スピアー。それぞれ、さらに味わいのある初老になっている。クスッと笑わせてくれるセリフ(ブリティッシュ・ジョークといえばいいか)もしっかり盛り込まれた、テンポの良い会話の数々に、こちらの気分も高揚するばかりだ。
出会った頃の面々は相手に自分を少しでも良く見せたいとか、大きく見せたいとか、格好をつけていたところもあるかもしれないし、ジェラルドにいたってはガズの元上司だったわけだが、歳月の流れと共に、上下関係のようなものも溶解して、皆、同じ目線に立ちながら、フランクに交流している。その図に、私はなぜか自分の未来を重ねてしまった。
“人生の秋”を迎えた男たちが、ドジや失敗もすべて受け入れた上で、醸し出す格好良さに接すると、シミやシワが増えることが怖くなくなってくる。さらに、第1話は犬もフィーチャーされているので、動物好きの方も必見だろう。
映画版と見比べるのも、もちろん大歓迎。しかも、今回は、ドラマならではのフットワークの軽さとスピード感&ポップ感が加わっている。梅雨のジメジメを笑いで吹き飛ばしたい、そんなあなたにぴったりの作品がオリジナルドラマシリーズとして復活した今作「フル・モンティ」なのだ。
◆文=原田和典
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