【漫画】息子とのちょっとした思い出も愛おしい…20年後の自分へ書いた手紙に「涙が止まらなくなった」の声

2023/06/21 10:00 配信

芸能一般 インタビュー

水彩画で子どもとの何気ない日常を描いた『未来の自分へ手紙を書いた話』が泣ける…画像提供/yukkoさん

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、“ありふれた日常の中にひそむ子どもとの思い出”をテーマに描いた作品『未来の自分へ手紙を書いた話』をピックアップ。

作者である水彩作家のyukkoさんが、2023月6月4日に本作をTwitterに投稿したところ、3.4万件の「いいね」や反響が多数寄せられた。本記事ではyukkoさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。

未来の手紙に書かれた内容は「何でもない日のこと」

『未来の自分へ 手紙を書いた話』(4/12)画像提供/yukkoさん


ある日、ネット上で「20年後の自分が今日にタイムスリップできたら、小さかった子どもに会いたい」というつぶやきを見かけたyukkoさん。そこで20年後の自分宛に、“子どもとの出来事を思い出せる手紙”を書くことにする。

未来の自分へ送る手紙には、「今日という日をプレゼントしたいと思います」というメッセージとともに、子どもと過ごす「何でもない日のこと」が書き綴られていた――。

「今年の夏も着られるようにと買った90cmのTシャツはダボダボしています」「息子に手を引っ張られてついていくと、家の近くなのに見知らぬ小道にたどりつきました。なんだか冒険しているみたいでした」「重い重いといってる息子の体重は11kgで、宇宙語でいっぱいおしゃべりしてくれます」など、日々の生活の中での“些細な出来事”を手紙に残したyukkoさん。

ラストシーンでは、子どもと手をつなぐ後ろ姿や手紙のイラストとともに、「20年後の今日も、今日みたいに何でもない日なんだと思います。そんな日を楽しみにしています」という言葉が添えられていた。

“何気ない日常の中にも幸せを感じられるような瞬間がたくさんひそんでいる”ということを、「未来の自分に宛てた手紙」を通して感じさせてくれる本作。ネット上では、「心が温まるような水彩画も素晴らしいし、手紙の内容もすごく素敵で泣きました…」「最高のアイデアだと思う!子どもとの尊い時間は、どんなことでも一生忘れたくないよね」「優しい絵のタッチと共感できるストーリーに涙が止まらなくなった」などの称賛コメントが多数寄せられている。

作画でのこだわりは「柔らかな肌を表現すること」

『未来の自分へ 手紙を書いた話』(9/12)画像提供/yukkoさん


――『未来の自分へ手紙を書いた話』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

未来の自分は小さかった子どもとの瞬間をどれだけ覚えてられるだろうか…そんな思いから「未来の自分に、今日という日をプレゼントしたい」と考え、手紙を書き始めました。そして20年後の自分のために手紙を書いたのですが、その時の手紙を書いた心情や光景も心に残したいと思い、『未来の自分へ手紙を書いた話』を描きました。

お誕生日などハレの日のことって、ちゃんと写真や動画に残ってることが多いと思います。だけど日常的な出来事、例えば「息子に手を引かれて近場にある見知らぬ小道に辿り着き、冒険しているような気持ちになったこと」など、そういったとても些細な出来事はいつか忘れてしまうような気がしました。

その一瞬一瞬が愛おしくて全て覚えていたいのに、すくった砂が指の間から少しずつこぼれ落ちてしまうように、ちょっとした記憶も徐々に薄れていってしまうと感じました。でも、いつかこんな何でもない日を愛おしく思うのだと思います。そんな日々を心に残したくて、本作を描きました。

――本作は、“ありふれた日常の中にひそむ幸せ”を感じられるような内容が印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。

息子に手を引かれて、今まで知らなかった近所の小道に辿り着くシーンにぜひ注目して頂きたいです。当時の私にとっては、何だか知らない場所へ冒険に行くようなワクワク感とドキドキ感がありました。なのでその時私が感じたように、そこで見る小道の絵がキラキラしているもののように感じ取ってもらえると嬉しいです。

大人にとって当たり前の光景も、子どもといると色鮮やかに変化することがあります。息子と町を歩くと発見ばかりです。道端に生えているオレンジの実、木の根元にあるアリの巣、八百屋さんの人たちとのコミュニケーションなど、息子がいたから触れ合うことができたものばかりです。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

「20年後の今日も、今日みたいに何でもない日なんだと思います。そんな日を楽しみにしています」という最後のフレーズです。きっと今だけでなく、20年後も目の前にある何でもない日をいつか愛おしく思うんだろうな、という気持ちを込めました。

以前、子育てを終えられたお孫さんがいらっしゃる方から、「息子と同じ仕草の孫と一緒にいると、懐かしい日を思い出して微笑んでいます。あの頃は私が手を差し伸べていたのに、今では息子が手を差し伸べてくれます」という感想を頂いたことがあります。20年後の今日も、その日が来ることは決して当たり前のことではなくて、きっといつか愛おしく思う大切な日なんだと思います。

――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?

私は2歳と5歳の息子達から、大切なことをたくさん教えてもらっています。大人の常識にとらわれない、子どもの純粋な視点にいつも驚かされ、感動しています。それを心に残したいという気持ちが、結果として作品という形になっています。

例えば、公園に行く道すがら、子どもたちは道の途中で何度も立ち止まりしゃがみ込みます。覗いてみると小さなアリやダンゴムシが。「公園行くよー」と声をかけてしまいそうになるんですが、彼らにとって遊具がある公園だけが魅力的な場所ではなく、道と公園に優劣はありません。道を「通過地点」と決めつけていた自分に、いろんな魅力がある場所だと教えてくれたのは子どもたちです。

――yukkoさんの作品は、心が温まるような絵のタッチやストーリーに優しさを感じます。作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか?

水彩画を描く上で意識しているのは、瑞々しい色合いや色の微妙な重なりよって、柔らかな肌を表現することです。

「触り心地ってどうして残せないんだろう」と、大切な人の頬を撫でながら、時々そう思うことがあります。淡い色の重なりや水彩絵の具の滲みや掠れによって、温かくて柔らかくて匂いがする、そんな肌触りのある作品を目指しています。

また水彩画は、滲みによって色が薄くなっていくことで、目の前にある光景の美しさだけでなく儚さも表現できるため、そういった点にもこだわっています。

――水彩画を始めたきっかけや理由があればお教えください。

水彩画を本格的に書き始めたのは、2018年に長男が生まれてからです。それまでも絵を描くことは大好きで時々描いていましたが、心から描きたいと思い始めたのは、子どもたちが生まれてからです。1番の原動力は、子どもたちの日々を忘れたくないと言う気持ちです。

――今後の展望や目標をお教えください。

これまで兼業として絵のお仕事をしていたのですが、今後は絵のお仕事を中心にしていきたい考えています。絵のお仕事で生活していくことができるか不安も多いですが、「日常の中にある“些細な出来事だけど愛おしい瞬間”を絵を通じて表現していきたい」と思い決断に至りました。

私は現在、オーダー水彩画の依頼を受けて絵の制作をしています。オーダー水彩画のコンセプトは「あなたの忘れたくない瞬間が、20年後も瑞々しく思い返せるように」です。『未来の自分へ手紙を書いた話』と同じ気持ちが根底にあり、未来の自分へ大切な思いをプレゼントするような作品をお届けしたいと思っています。

ただ似せるための絵ではなく、その時の感情がいつまでも蘇る作品にしたいため、必ず絵の制作に着手する前に、「絵に込めたい気持ち」を依頼主の方にヒアリングしています。一人一人の依頼者の方が、心に残したい気持ちや光景を丁寧に教えてくださり、その気持ちを聞くと私まで胸がいっぱいになります。

制作には時間がかかってしまうのですが、依頼者の方は長い時間待ってくださり、また大切な気持ちを私に託してくれます。それは、とても幸せなお仕事だなと思っています。

いつか本の挿画や、書籍や絵本の制作もしていきたいです。

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!

作品を見ていただけてとってもうれしいです。もし私の作品を通して、波紋が広がるように大切な時間を思い出してもらえたら幸せです。その大切な時間を、ぜひ展示会などでお会いした時にぜひ教えてください。

また本作をきっかけに、「もし未来の自分へ贈れるとしたら、どんな日々を贈りたいですか」とSNSで問いかけたところ、大勢の方が、エピソードを投稿してくれました。ぜひ、Twitterで「#小さな君との日々展」を見てみてください。