声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像作品や舞台俳優としても幅広く活躍する佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本から受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。
==
コンプレックスというのはなかなか消えて無くならない。
周りが「そんなことないよ」と言ってくれる言葉さえ嘘に感じてしまう厄介な存在だ。
紹介するのは中山七里さんの「隣はシリアルキラー」という作品だ。
主人公の隣の部屋からまるで人体を解体しているような音が聞こえ、徐々にそれが本当に解体しているのではないかと確信してしまう出来事が次々と起こる。
連続バラバラ殺人事件の犯人は隣人なのか、はたまた別にいるのか。
疑心暗鬼になりながらも展開が気になって思わず読み進めてしまうホラーミステリーだ。
今回読みながら自己評価と他者からの評価は案外同じなのかもしれないと所々の文章から感じた。
例えば主人公と主人公の彼女にはそれぞれ秘密があり、それを明かすことで周りが自分のことを避けてしまうのではないか、それが不安で嘘に嘘を重ねてしまう。
コンプレックスを隠すために嘘をついてしまうという経験はもしかしたら誰にでもあることなのかもしれない。私自身のコンプレックスというのは顔だ。
この顔が好きだと言ってもらえてかなり意識は変わり始めたが、未だに自分の顔に自信が持てるかと言われるとはっきり答えることが出来ない。
きっかけは子どもの頃に活動したアイドル活動だった。当時自分の顔をなんとも思っていなかったがSNSと隣り合わせな仕事だったこともあり、私のことを見た方が悪気がなく、正直な感想を書き込んでいるのを見て「私は万人受けする顔ではない」と思うきっかけになった。だが、自分の顔をSNSに上げることで顔を覚えてもらって何かの仕事につながることもあるから私は今も上げ続けているが、やはり厳しいコメントはくる。
今はもう傷つくというよりも、そうだよなという気持ちにしかならないが、コンプレックスを努力に変えるというのはなかなか労力の必要な動作だし、コンプレックスが努力不足だと言われてしまうと何も言い返せない。
本作の犯人はそのどうしようもなさが爆発してしまった描写があり、なんだかやるせ無い気持ちになってしまった。これから先、コンプレックスを完璧になくすことは出来ないが、負の感情を爆発させずにそんな自分も大好きになってあげられるようにならなければなと思う作品だった。
誰かを否定するのは簡単だが、その言葉に含まれる棘に気付けるような、そしてその棘を抜けるような人になりたい。本作を読んで感じるものはきっと人によって違うだろう。貴方は読了後何を感じるだろうか。是非、手に取って確認してみてほしい。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)