昂太の車の鍵を放り投げて、陽子は急いで凪の通う学校へ向かう。早退させた凪を車に乗せて向かう先は、思い出の浜辺だった。
まだ凪が陽子のおなかにいたころ、穏やかに凪いだ海を見て「凪」という名前を思いついた陽子。「この海みたいに穏やかで、凪いだ人生を歩んでほしい」という陽子の言葉に、昂太も笑ってうなずいていた。
しかし今、その海は風によって波しぶきを上げて荒れている。陽子が「今、うちがどんな状況か分かるよね?」と聞くと、凪は沈痛な表情でうつむいた。何も気付いていない顔で気丈に振舞っていた凪だが、彼はすでに父親の不倫現場を目撃していたのだ。
続く母の言葉を聞きたくないのか、凪は唐突に「友達は休みの日に、家族で出掛ける。でも、うちは違う」「みんなのママは毎日一緒にご飯を食べて、学校の話を笑って聞いてくれる。でも、ママは仕事のことで頭がいっぱい」と話し始める。そして「だからパパも浮気した」と、陽子にとって最悪の言葉を投げつけた。
ショックを受けた表情で、「ママのせい?」と絞り出す陽子。「パパはいつも一緒にいてくれてる」という凪に「仕事がないからよ。全く稼いでない」と陽子が反論すると、興奮した凪は「お金が一番大事なの!?」と声を上げた。息子と家族のためを思って激務をこなしてきた陽子には、とてつもなく苦しくなる言葉だろう。
「お願い、パパを許してあげてママ…」と懇願する凪だったが、陽子はすでに何度も許そうとして、裏切られてきた身。「それはもう無理なの」「二人だって大丈夫でしょう? もっと一緒に居られるよう、ママ頑張るから」凪の目を見て穏やかに言葉を重ねる陽子だったが、凪は「パパと一緒がいい!」と興奮して鋭い言葉をぶつけるばかりだ。
震える声で「パパが好き?」と問う陽子。すぐさまうなずく凪に、続けて「ママは?」と質問を重ねた。しかし、凪は顔を背け、たっぷり言い淀んでから「好きじゃない。今のママは…」と言葉を吐き出す。
夫に裏切られ、息子に愛を理解してもらえず…。陽子は知らずに荒くなる呼吸を抑えつつ、車に向かう。後部トランクを開けると、以前昂太に向かって振り上げようとした医療用の大きなハサミを取り出した。そして、ハサミを後ろ手に隠したまま凪に近づく。「ママ?」と怪訝そうな凪の声に応えず、力の限りハサミを握りしめる陽子。奇しくも昂太の裏切りを確信した直後と同じ構図で、第12話は終了する。
陽子はこのまま反撃を諦めてしまうのか?「夫婦が壊れるとき」は6月30日(金)深夜1時の第13話で最終回を迎える。
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