コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、漫画家・こだまはつみさんの『この世は戦う価値がある』をピックアップ。
週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて連載されている本作。こだまさんが5月8日に本作の第1話を自身のTwitterに投稿したところ、10.3万以上の「いいね」とともに多くの感想コメントが寄せられ反響を呼んでいる。この記事ではこだまはつみさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
会社で上司や先輩からセクハラやパワハラを受け、心を削られている入社3年目のOL・伊東紀理。自身の仕事にも手をつけられないうちに次々と別の業務を押しつけられ、終電で帰宅し玄関で朝を迎える限界な日々を過ごしていた。
残業に追われる合間、恋人であるヒロに呼び出される紀理。しかし、会った途端にヒロは「金を貸せ」と迫ってくる。ヒロはこれまでにも紀理にひどい言葉を浴びせ、金や欲しい物を無心してくるモラハラ男だった。一人の帰り道、終電で寝過ごしてしまった紀理は仕方なく歩いて帰るも、主任から新規の取引先を任せるという電話を受ける。エナジードリンクを飲み、寝ずに作業する紀理だったが、夜中2時に再びヒロから呼び出される。ヒロの強い口調に断れ切れない紀理は、「1時間だけ」と言い聞かせて家を出るのだった。
次の日、必要な資料が間に合わず、紀理は他の社員の前で先輩から怒鳴られてしまう。急な動悸とめまいを感じた紀理は、先輩にお願いし定時で帰らせてもらうことに。しかし帰る途中、道端で偶然にもヒロが別の女と腕を組み親しくする姿を見かける。その瞬間、すべてがどうでもよく思えて、死ぬことを決意する紀理。まずは部屋を整理しようと郵便物を確認すると、ある封書を見つけて…。
会社でも恋人との時間でも自分自身の感情を押し殺して生きていた紀理が、すべてをリセットしてやり直す姿を爽快に描く“人生総決算”ドラマ。Twitter上では「スカッとした!」「最っ高にかっこいい」「こんなに胸が晴れる漫画読めてよかった」「めっちゃ背中押してもらえる」「彼女の決意と心意気に一番グッときた」「どうか同じ境遇の皆さんも一線を超えない程度に全て壊して欲しいです」など多くの感想コメントが寄せられ、反響を呼んでいる。
――『この世は戦う価値がある』が生まれたきっかけや理由があれば教えてください。
きっかけは、担当編集さんに初めてご挨拶させて頂いた際「こだまさんの絵で夜道をふてぶてしい態度の女の子が鉄パイプを引き摺りつつ歩いてるシーンを見てみたい」という言葉を頂いて、女の子が元彼から金を取り立てに鉄パイプで襲撃にいくプロトタイプのネームができて、そこからの流れだったかなと思います。
――限界OLである伊東紀理の“人生の総決算”が読者の共感を得ている本作ですが、紀理のキャラクターや設定はどのように生み出されたのでしょうか?
自分が常々「どこか欠けた部分のある人」に強く魅力を感じていたので、それをテーマにこういう女の子が描きたいなと思い、設定表を何人か描いた中に汗をかいた紀理の絵がありまして、そこに担当さんが彼女の抑圧された環境のイメージをのっけてくださって原型が出来上がりました。
――本作をTwitterに投稿後、10.3万を超える「いいね」が寄せられ話題を集めています。今回の反響について、こだまはつみさんの率直なご感想をお聞かせ下さい。
仕事としてこれまでやってきて初めてのことだったので大変有り難かったです。とはいえ題材が目が止まりやすかったということでもあって、連載としてはまだまだ先が大事なのでこれからも気を引き締めていかないとと思っています。主人公と近い境遇で…というご感想もいくつか頂いたので、そのみなさんがこの作品のことをいつかすっかり忘れるくらい状況が改善されていくことを強く願っています。
――紀理をはじめ登場人物たちの人間味あふれる表情や仕草など、リアルで繊細な人物描写も印象的です。作画の際にこだわっている点や特に意識している点がありましたら教えてください。
背景作画を担当してくれているアシスタントさん達がいつもびっくりするくらいかっこいい背景を描いてくれるので、安心してキャラクターの演技に集中させてもらえてると思っています。作画に関してはまだまだ勉強中で、手癖で描いてしまいがちな表情も多いのでもっとドラマや映画や舞台など色んな俳優さんのお芝居のバリエーションを観察しながら学びたいなと思います。
――本作の中で特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?
気に入っているシーンは紀理が元彼の口にバットを上から押し付けているシーンで、これは1話の中で一番自分のイメージ通りに描けたからです。思い入れがあるセリフは1話中盤で泣きながら夜道でたらたら言っている文句なのですが、あれは普段の生活で全部自分が思ってることなので、主人公の境遇と近い方やそうじゃない誰かにもどれかが届いたら嬉しいなと思ってセリフを練りました。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
この作品の行動が正解であるとか、ドロップアウトマニュアルにするつもりは全然なく、このキャラクターなら直面した事柄にどう向き合っていくかを真剣に最後まで熱を持って取り組んでいきたいなと思っています。誰かのもしもの世界として、気楽に楽しんでいただけたら何よりです。よろしければこれからも末永くどうぞよろしくお願いいたします!
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