乃木坂46・山下美月“晃”、笑顔という仮面の下に隠した本当の気持ちが切ない...<さらば、佳き日>

2023/06/27 10:48 配信

ドラマ レビュー

晃「私もあんな真っすぐに生きられたらなぁ」


ドジで頼りない兄だが、人一倍心が優しい桂一は、その素直さゆえに“気付く”力も人より優れているように感じられる。晃が「おいしいよ」と言ってほほ笑んだ時、桂一はそれが嘘だと気付いていた。幼い頃、焼いたパンの耳で指を軽くやけどした晃が「大丈夫」と言って、痛いのを隠してほほ笑んだことも知っていた。そんなふうに笑う時は嘘をついている。それが分かるのは、誰よりも長く晃と一緒にいた桂一だから。

高校卒業ということで、晃と珠希との関係性も回想シーンで明らかに。母親の陰口をクラスメイトが話しているのを聞いて珠希は自虐的なことを言ってやり過ごそうとしたが、そんな珠希に「無理して笑わなくていい」と晃は声をかけ、それがきっかけで親友になった。

友達のためなら本心を語ることが出来るけれど、自分のこととなるとまるで逆。笑顔で本心を隠そうとしてしまう。晃自身もそれは分かっているのだろう。「プロ野球選手になる」という夢を語るクラスメイト・柳沢の「気が済むまでやり抜くって決めてんだよ」という言葉に「私もあんな真っすぐに生きられたらなぁ」と本音がポロリ。

最後も晃は「きっと帰ってくるよ」と悲しい笑顔で...


2人での生活の最後の日は、桂一が食材を買うのを忘れて晩御飯はカップ麺。それでも晃は怒ったりしない。それどころか「キャンプ飯みたいで楽しいじゃん」と桂一のミスをしっかりとフォロー。

最後の夜は子供の頃のように2人で布団を並べて寝ることになり、電気を消した後の会話で「晃は好きな人いるの?」と聞かれ、「私が誰を好きか、ケイちゃん、知ってるくせに...」と答えた時は思わず本心が出てしまったのだろう。桂一の「ごめん...。おやすみ」の言葉に複雑な思いが垣間見えた。

晃が家を出る朝、桂一が「本当は出て行きたくないんじゃないか」と聞くと、晃は「ずるいよね。私ばっかりに言わせようとするんだから」と言って、少し本心を明かした。桂一は自分がいないとダメなんだじゃなく、桂一がいないとダメなのは自分の方だった、と。「一生、ケイちゃんのそばにいられるわけじゃないんだから」という言葉が重く感じる。

「たまには帰ってくるんだろう?」という問いかけに、「うん、そうだね。きっと帰ってくるよ」と笑顔で答える晃。その笑顔は、桂一にとってこれまでで一番悲しい笑顔だったに違いない。

本音や本心を垣間見せつつも、笑顔という仮面でそれを隠してしまう。そんな晃のもどかしさも感じられる回となった。

◆文=ザテレビジョンドラマ部