「『マッシュル-MASHLE-』THE STAGE」が7月4日(火)より東京・国際フォーラム ホールCにて開幕する。原作は集英社「週刊少年ジャンプ」にて連載中のバトル漫画で、魔法が当たり前に使われる世界を舞台に、まったく魔法を使えない主人公のマッシュ・バーンデッドが、鍛え上げた筋肉だけですべてを乗り越えていく物語。舞台化にあたり、歌・ダンス・アクションをふんだんに盛り込み、舞台ならではのおもしろさを追求した作品になるという。演出を手掛ける伊藤今人、振付を担当する梅棒(野田裕貴/多和田任益)、えりなっちにインタビューを実施し、本作の見どころを聞いた。多彩な作品を手掛けるクリエイター陣が、2.5次元の創作において意識していることとは。
――まさに稽古真っ只中という感じですが(取材は稽古場にて実施)、状況はいかがですか?
伊藤今人 作るのに必死です!(笑)まず僕が全体のシーン分けと基本の動きをつけた後、今はひたすら振付とアクションをつけてもらっていて。今回「マッシュル-MASHLE-」THE STAGEって言ってますけど、ほぼミュージカルなんですよね(笑)。歌とダンスとバトルシーンが肝になるなと思って時間をかけています。ちょうどこれから、バラバラに作っていたシーンをつなげて通してみようとしているところです。
えりなっち こんなペースで振付したの初めて(笑)。キャストもシャカリキで、毎日新しい曲を覚えては、すぐその振りを入れて…って感じなので、大変だろうな~と思うんですけど、見ているとすごく楽しそうに「いい舞台になりそうだね」って、皆さんポジティブで一生懸命なので、いい座組だなと思います。
――今人さんは、J-POPにのせたダンスで物語を表現するパフォーマンス集団「梅棒」の代表として活動され、2.5次元作品の振付も多数手掛けられていますが、2.5次元作品の演出は「アグレッシブ ダンス ステージ『DEAR BOYS』」に続き2作目となります。漫画原作を舞台に立ち上げる上で、どんなことを意識されていますか?
伊藤 元々、梅棒の表現方法も2.5次元的な部分があったりするので、作る上で特別違った表現に挑戦している感覚ではないんですが…大事にしているのは「必要ないなら変えない」ことですね。原作は既に作家さんの手によって最適なバランスで生み出されているものなので。ただ、演劇として上演する以上は演劇ならではの表現にしようと、脚本の亀田(真二郎)さんとも相談しながら作っています。
――原作の「マッシュル-MASHLE-」は強大な魔法の力や、筋肉による超人的アクションなど、舞台化が難しそうなシーンも多いですが、演出されてみていかがですか?
伊藤 まず僕に演出のお話を頂いたときから、この作品は「筋肉表現と魔法表現の描き分け」がひとつのテーマになると思いました。魔法を使う人が大多数の世界で、マッシュだけが筋肉の力で解決していく。「こんな強い魔法に勝てないよ…パンチでドーン!」というカタルシスをどう表現するか、メリハリや緩急のつけ方を考えました。魔法も、映像で表現する作品は既にもうたくさんあるので、今作では映像を効果的に用いつつも、なるべく演劇ならではの小道具や身体の表現でやりたい。もちろん僕ひとりじゃ作れない。でも、これまでの活動の中で出会った、信頼しているクリエイター陣の力を借りれば作れると思ったんです。
脚本の亀田さんとは、振付を担当しているエーステ(「MANKAI STAGE『A3!』」)でもご一緒しているんですが、僕が演出するならこんな風にしてほしいという脚本を書いてくれました。「マッスルズ」(マッシュの筋肉の概念を表現するダンサー)も亀田さんの提案です。振付は梅棒メンバーの野田・多和田に加えて、去年の梅棒公演にも出てくれていて、TVアニメ「マッシュル-MASHLE-」のエンディングテーマ(「シュークリーム・ファンク」)も振付しているえりなっち。さらに、僕はダンスと演劇を両輪でやってきた人間ですが、演劇の方では「アクションですべてを表現する」という活動をされている竹村(晋太朗/劇団壱劇屋)さんとの出会いがあったり、ダンスを通じて出会ったチーム「FULLCAST RAISERZ」「RAISERZ A.R.M.Y」のメンバーが「マッスルズ」として出演してくれる。この作品のために奇跡的にすべてがつながったような感じです。だから、今は何の不安もないですね。
――「マッスルズ」としてクレジットされているダンサーの皆さんは、具体的にはどんな役割を果たすのでしょうか?
野田裕貴 マッシュが戦ったり何かをするときに、周りでそのパワーを表現するんですが、まず技術がすごいので、見ていてワクワクすると思います。
えりなっち フィジカルもとんでもなくデカいし黒いから、視覚的に「これは筋肉の概念なんだ!」ってわかる。演劇のシーンにはないような動きをするので、魔法を使えないマッシュの異質な強さが表現されてると思いますね。
多和田任益 1回見たら癖になります。個人的には、マンガの効果音の「ドーン!」「バキバキ!」みたいな描き文字の役目を担ってくれているんじゃないかなと。
――なるほど、かなりイメージがわきました。アクションについてはどんな見どころがありそうですか?
伊藤 カッコいい殺陣を付けられる殺陣師さんはたくさんいると思うんですけど、竹村さんのアクションがすごいのは、さらに「それを人力でやるんだ!?」というおもしろさがあるところ。竹村さん自身も演出家なので、フィジカルで表現する演劇らしさの魅力を理解してくれている。この作品とすごくマッチしていると思います。
――キャスト陣についてもお聞かせください。主演・マッシュ役の赤澤遼太郎さんはどんな印象ですか?
えりなっち すごくプロフェッショナル。自分の中でキャラクター観を確立させた上で、芯を持って演じてるのがすごいです。
多和田 自分の出ない場面を稽古している間は大体筋トレしてるか、台本を見返してる。あと、振付の意図を汲み取って「これって、こういうことですよね?」という建設的な質問をしてくれるので、めちゃくちゃやりやすいし、彼が座長でいてくれるから成り立つんだなと感じます。
伊藤 まずマッシュルームカットとスポーツ用アンダーウェア(マッシュが劇中で着用)でオーディションに現れた時点で「すごいな」と思いました。あと、マッシュって難しい役で、ジャンプの漫画だけど“ジャンプ的”じゃないんですよ。わかりやすく強いやつと戦えることにワクワクする主人公ではない。でも感情が表に出にくいだけで、ロボットじゃないから、心の中では燃えているものがある。これをどう演じていくかという話をして、今はまず感情を素直に出す形で演じてみて、ここから話し合いながら表現を落ち着けていこうとしています。そういう健全なコミュニケーションがとれる、素敵な俳優ですね。
――マッシュたちアドラ寮と対立するレアン寮のリーダー、アベル・ウォーカー役の笹森裕貴さんはいかがですか?
伊藤 以前別の作品で一緒になったときは静かなタイプかと思っていたんですが、久々に会ったらいろんな舞台を踏んできたからか、すごく堂々としているし、自分の持っている技術をわかっていて「自分はこれだけできます」って出せる俳優になっていた。気さくでおもしろいし、稽古場のムードも明るくしてくれます。
野田 レアン寮のメンバーは、稽古中も4人で自主練して、合流が遅れたメンバーをフォローし合ってくれているんですが、それも率先してひっぱってくれているんです。
多和田 すごくパワフルで、僕達がイメージしていた以上のものを出してくれるから、逆に振付のヒントをもらえています。
伊藤 でも変なヤツ(笑)。本読みの段階から小道具の人形を持って「これを抱いた方がやりやすい」とか言ってたんですけど、それがアベルの持つ人形じゃなくて、赤ちゃん時代のマッシュを模した人形だったんです。気づいてなかったみたいで。
多和田 ちょっと天然なのかもしれない(笑)。
――その他、キャストとの印象的なエピソードがあれば教えてください。
多和田 オープニングナンバーの振付をしたとき、ラブ・キュート役の花奈(澪)さんが、そのナンバーでの出番はそこまで多くないのに、頭から全部踊ってました?ってくらい汗だくになってくれて。そのパワフルさを見たときに「いける!」と思いました。ソロ曲の振付もグイグイいっちゃおうって。
えりなっち ラブちゃんにぴったり。
伊藤 キャストがみんな良いから、言い出したらきりがないんですけど…フィン・エイムズ役の広井(雄士)くんは、毎回稽古の最後まで残って練習してて、素直で努力家。フィンにすごく合っていると思いますね。仮にその場ですぐにできなくても、ちゃんと練習してできるようにしてきてくれるから、「次はこうしてみようかな」「もっとこうしてみたいな」と演出が欲をかけるタイプ。
多和田 振付チームの推しです!(笑)。応援したくなるというか、お客さん目線にさせてくれる感じがありますね。あと天然!
えりなっち わかる。この座組、ふわふわ系が多いよね。
多和田 石川(凌雅/ランス・クラウン役)くんも天然だし、中原(弘貴/ワース・マドル役)くんもド天然。京典(和玖/アビス・レイザー役)くんもこの間話した感じだと、(天然な部分が)潜んでると思います(笑)。
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