――皆さんが「2.5次元作品の振付」だからこそ特に心がけている点や、おもしろさはありますか?
伊藤 意識しているのは「振付で縛らない」ことですね。アイドルやアーティストに振付をするときって、グループの一体感や振りを揃えることを意識するけど、舞台だと、例えばマッシュとレモンちゃんではジャンプ力も歩幅も違う。だから「このワンエイト(8拍)でここからここまで移動してくれれば、動き方は任せる」みたいな形で、演者にキャラクターとしての個性を出せる余地を残した方が、生き生き踊れる。
えりなっち わかります。私は広告に出るタレントとかアイドル、アイコン的な方への振付が多いんですけど、その場合は自分で間を埋めることのほうが難しいから、しっかりバチバチに全部決めて作るんです。その方が作品としていいものになる。でも演劇は「それぞれのキャラが意思を持って動いている体」のダンスだから、全部決めちゃうとそれぞれの意思が死ぬというか、役として減速しちゃうと気づいて。ある程度自由にやってもらった方が、ダンスが華やかになる。これが2.5次元か!ふむふむ!って感じです。
伊藤 あと、位置関係と距離感はすごく意識して振り付けています。アニメは平面の遠近法だけど、舞台になると奥行きが生まれるから、キャラ同士の関係性を立体的に表現できるんですよね。位置と動きを考えてるときが一番楽しい(笑)。たとえば今回の話の中では直接的な関わりがないキャラクター同士を「背を向けて目を合わせない」みたいに、今後の関係性の変化をふまえた距離感にしておくことで、原作を好きな方から「今はまだそういう関係性だよね!」と感じてもらえる。演劇はセリフ以外でも表現できることが多いので、そのあたりも振付の仕事だと思っています。
――野田さんと多和田さんはいかがですか?
野田 稽古の中で演者さんそれぞれの役への向き合い方が見えてくると、自分のつけた振付と演者さんの役の解釈が共鳴して立ち上がっていって、時には解釈に合わせて振付を変えたりもする。そのやりとりが自分も役を演じているみたいで、やりがいや楽しさを感じますね。
多和田 すいーつさん(野田)も役者だから、役者の気持ちがわかるんだと思います。僕も、役者としてはまだまだですけど、「もし自分がこの役をやれるとしたら、こういう風にできると気持ちが乗りやすいんじゃないか」と、演者の気持ちを意識して作ることは大事にしています。あと、自分自身オタクなところがあるので、お客さん目線で「このキャラがこんな動きをしたら萌えるな…」とも考えていますね。
――最後に今人さんから代表して、「マシュステ」を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
伊藤 「マッシュル-MASHLE-」は筋肉と魔法、ファンタジーとギャグというように、相反する要素の対比と、高めた障壁を一撃でぶち壊すカタルシスが心地いい漫画だと思っています。演劇でそれを表現するのは難しいところもあるけど、今回のクリエイター陣ならそれができる。さらに、稽古場の雰囲気も重視して集めたから、もう…アガッてる人しかいないんですよ!(大声) ポジティブにモチベーションを上げていける稽古場、それぞれのセクションが、どうしたら作品がおもしろくなるか前のめりに向き合っている稽古場になっているので、素晴らしい作品になると思います!
■取材・文/WEBザテレビジョン編集部
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