そんな時、高校生の妹・風美(中村里帆)が帰ってきて、颯に東京みやげをねだった。が、何も持って来なかった颯は、風美に「全然成長してへんやん!」とキレられる。どうやら完全に妹の尻に敷かれているようだ。そして風美は、夕飯は唐揚げだと告げて、部屋を出ていった。
颯はそれを聞いて「またアノ話をされるのか…」とため息をついた。“アノ話”とは、颯が小さい頃、大好物の唐揚げを廊下で落としてしまい、ショックが大きすぎたのか、空になった皿を両手で持ったまま1分ほどフリーズしていた、という話で、母親はいまだに言ってくる為、彼はウンザリしていた。
颯は、新しい事を前にした時、失敗した時、迷子になった時などに固まってしまう子供で、20歳になった今でも、何もできずに立ち尽くす性質は直っていなかった。彼は子供時代を回想する中で、父親に「優しい」と褒められた事を思い出した。父親は、そんな颯に「オレの自慢だ」と言い、「自信を持って、顔を上げて、まっすぐ前を見なさい」と語りかけた。その言葉を思い出して、颯は「前に進みたいなら、まず前を向かなきゃ」と、ふさいでいた気持ちが少し晴れたようだった。
そして、あっという間に帰京の日に。帰りのバスに乗っていると、また立っている妊婦が目に入った。颯は席を譲る為に立とうとしたが、また妊婦じゃなかったらどうしよう…と、先日の気まずい空気を思い出して躊躇した。でも、妊婦じゃなかったとしてもあの女性が座れる事に違いはない、と思い直し、思いきって声をかけた。女性は「ありがとうございます」と礼を言って席に座った。彼女のバッグにはマタニティーマークが付いていた。
つり革につかまった颯が何気なく後部座席に目をやると、そこには幼い自分と座る父親の姿が。颯を見て力強くうなずく父親に「次の誕生日には、いい報告するよ」と彼は誓った。次回、最終回に颯の“やりたい事”は見つかるのだろうか。期待と応援の気持ちを込めて見守りたい。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
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