サミュエル・L・ジャクソン、強面な風貌に穏やかな笑顔のギャップ 記憶にも記録にも残る“アカデミー名誉賞”俳優

2023/07/05 16:10 配信

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サミュエル・L・ジャクソン演じる「シークレット・インベージョン」の主人公ニック・フューリー(C) 2023 Marvel

6月21日から配信がスタートしたマーベルの新作ドラマ「シークレット・インベーション」。“アベンジャーズ”の創始者ニック・フューリーを主人公にしたサスペンス・スリラーは、マーベルファンが待ち望んだ作品と言える。フューリーは元軍人で、国際平和維持組織「S.H.I.E.L.D.(シールド)」の元長官。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)には欠かせない存在だ。そんなフューリーを演じているのが、サミュエル・L・ジャクソン。威厳があって強面な風貌。笑顔は穏やかな印象もあるが、とにかく見た人の記憶に強烈な印象を与える俳優。キャリアも長いので、改めてこれまでの活動と軌跡を振り返ってみたいと思う。

「Together for Days」で長編映画デビュー


1948年12月21日に米国ワシントンD.C.で生まれた。テネシー州で育ち、ジョージア州アトランタのモアハウス大学で海洋生物学、建築、そして演技を学んだ。長編映画デビューを果たしたのは1972年公開の「Together for Days」。しかし、すぐに俳優として活躍したわけではなく、そこからブレイクするまでには時間を要した。1976年にニューヨークに拠点を移し、そこで多くの舞台経験を積み、その中で映画監督のスパイク・リーとの出会いがあった。

1988年公開のエディ・マーフィー主演作「星の王子ニューヨークへ行く」にバーガーショップの強盗役で出演したりしているが、彼に“役”を与えてくれたのはスパイク・リー監督だった。1988年の「スクール・デイズ」、1989年の「ドゥ・ザ・ライト・シング」、1990年の「モ’・ベター・ブルース」、1991年の「ジャングル・フィーバー」に出演したことで役者としての才能が開花した。

スパイク・リー監督は人種差別を題材にするなど社会派作品が多いのが特徴。サミュエルは「ドゥ・ザ・ライト・シング」では街の小さなラジオ局を切り盛りするDJ役で、作品の狂言回し的な役割を担う。

「モ’・ベター・ブルース」ではスポーツ賭博の胴元役、「ジャングル・フィーバー」では主人公の兄役で、厄介者といった人物を演じたが、「ジャングル・フィーバー」で「第44回 カンヌ国際映画祭」コンペティション部門の「助演賞」を受賞した。実はカンヌ映画祭には通常助演賞はなく、この回だけ特別に贈られた賞ということを考えると、サミュエルの演技と存在感がすごかったことが分かるだろう。

さらにブレイクしたきっかけとなったのが1994年公開のクエンティン・タランティーノ監督による「パルプ・フィクション」。テンポ感のいい異色のバイオレンスアクション作品で、サミュエルはジョン・トラボルタとコンビを組み、ギャング役を好演。カンヌ映画祭で作品がパルムドールに輝き、サミュエルも英国アカデミー賞の助演男優賞を受賞した。タランティーノ監督とも相性が良く、1998年の「ジャッキー・ブラウン」の他に2012年公開の「ジャンゴ 繋がれざる者」、2015年公開の「ヘイトフル・エイト」にも出演している。

「シークレット・インベージョン」より(C) 2023 Marvel

“交渉人VS交渉人”スリリングな演技もお手の物


「パルプ・フィクション」の翌年、1995年に公開されたブルース・ウィリス主演の「ダイ・ハード3」。“世界一運の悪い男”ジョン・マクレーン警部補はすっかりおなじみだが、サミュエルは元タクシードライバーで、ハーレムにある家電修理店の店主ゼウス・カーバーを演じた。この作品におけるマクレーンの相棒的人物で、ブルース・ウィリスに負けない存在感を示した。2000年公開の「アンブレイカブル」でも2人の共演が見られる。

1998年公開の「交渉人」もサミュエルの演技のすごさを感じさせてくれる作品の一つ。立てこもり犯と交渉し、人質を解放させて事件を解決する“交渉人”。サミュエルが演じるダニー・ローマンもすご腕の交渉人だが、警察内での不祥事(横領)を暴こうとする相棒の刑事が何者かに殺害され、ダニーは殺人と横領の罪で逮捕されてしまう。潔白を証明するために彼が取った行動は“立てこもり”。その交渉人にケヴィン・スペイシー演じるクリス・セイビアンを指名し、そこからスリリングな交渉が展開する…。細かな演技を楽しみたい人におすすめの作品だ。