コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、漫画家・大熊サイヤさんの『ミキちゃんの髪がのびたから』をピックアップ。
サンデーうぇぶり(小学館)にて読み切り掲載されている本作は、成長期を迎えた小学生たちの心の葛藤をテーマにした物語。作者の大熊サイヤさんが5月16日に自身のTwitterに投稿したところ、3.7万以上の「いいね」が寄せられ、SNS上でも反響を呼んでいる。この記事では大熊サイヤさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
小学5年生で、同じラグビークラブのチームメイトでもある梢ミキと南沢ヒロ。身長も高く、ラグビーも上手くて一目置かれる存在であるミキとは対照的に、ヒロは運動が苦手でおとなしい性格。ミキに誘われて始めたラグビーも全然うまくできないヒロは、いつしか「強くてかっこいいミキちゃんみたいになりたい」と思うようになる。
ある日、練習中にタックルを受け腹痛を感じ、思わずその場に座り込んでしまうミキ。立ち上がると、地面に血がついているのを見てハッとする。心配したチームメイトが集まってきて声をかけるも、ミキはその場から逃げ出すように女子更衣室へと駆け込み、もどかしさから涙を流す。ミキは身体の成長とともに“自分が変わってしまうこと”に恐怖を感じ、その変化を受け入れられずにいたのだった。
練習終わり、心配したヒロが更衣室を訪れる。しかし、ミキはドア越しに「ヒロには私の気持ちなんて一生わかんない」と突き放してしまう。ミキの些細な変化に気づいてはいたものの、その言葉に悔しさを感じたヒロは、ある行動に出て自分の思いをぶつける…。
成長期による身体の変化に戸惑う小学生の心情をリアルに描いた本作。繊細な感情描写も話題を集め、Twitter上では「胸がチクチク痛くなる」「自分と重なった」「自分が変わっていってしまう気がする恐怖もすごく分かる」「葛藤がひしひし伝わってくる」など多くのコメントが寄せられている。
――『ミキちゃんの髪がのびたから』が生まれたきっかけや理由があればお教えください。
ラグビーを愛する担当さんから「ラグビーを題材に描いてみないか」と提案してもらったのがきっかけです。お互いに"強い女性"に憧れているという部分が共通していた事もあり、じゃあラグビーを頑張る女の子の物語を描いてみっか!と。
――南沢ヒロと梢ミキ、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
テーマを決めてからすぐ2人同時に生まれた気がします。正反対だけどどこか共鳴している2人というキャラ配置が好きなんです。
――本作は身体の成長に葛藤するミキちゃんと、その些細な変化に気づいて寄り添うヒロ、2人の関係性が印象的ですが、本作に込めたテーマや思いがありましたら教えてください。
歳を重ねるにつれ周りとのギャップが目に見えてきて不安になるというのは、自分自身も多く感じてきた気持ちです。例えば仲のいい友達が知らないオシャレ用語を使っていたり、大人っぽい映画について語っていたり……身体の変化に限らず身近な人の些細な変化に心を乱した経験をした人って多くいると思うんです。男と女の体格差なんてまさにそうで、ラグビー女子を描く上で目を逸らせないものでした。そういう気持ちを抱えた読者の救いまでにはならなくても、「わかるよ」と伝えられればと。
――本作では、登場人物たちの感情あふれる繊細な表情描写にも大熊サイヤさんのこだわりを感じました。作画をするうえでこだわった点や特に意識した点はありますか?
今作のキャラの多くは小学生なので、使っている言葉もなるべくシンプルにしています。ですので台詞以上の感情が読者様に伝わるような表情を意識して描いたつもりです。生理直前のミキちゃん(歩道橋のシーンあたり)はイライラしてるだろうなとか、女の子相手には感情隠しちゃうだろうな、とか、そういった事も汲み取って表情を入れました。
――本作の中で特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?
ロッカールームを上から描いたシーンです。1人分の荷物、生理用品…電気をつける気力もないミキちゃんに全てを突きつけてしまうのが本当に心苦しかったです。チームメイトの男の子達はみんなミキちゃんをただのチームメイトとして受け入れてるはずですし、ミキちゃんの行動や言動、心情などもそのチームメイトたちと何一つ違わないのです。なのに、どうしてもロッカールームだけはひとりぼっちになってしまう。男女である以上しょうがないことですが…。あの時のミキちゃんにとってはあまりに酷だったよね…すまぬ…ミキ…。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
自分の唯一の誇りは、読者様が本当に愛ある人たちばかりだという事です。感想を文章にするのってすごくカロリーを使う事だと思います。それなのにとても美しい言葉で想いを伝えてくれる方が沢山いて、すごいです!作者としてこんな幸せな事ないです。
後にも先にも自分の漫画の核は“愛”と決めています。紡いでいきたいです。今後もなにとぞ…!!!
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