菅原小春、独占インタビュー第2弾! いまの10代のダンサーたちから感じるものとは?

2017/07/11 18:00 配信

芸能一般 インタビュー

「10代の子たちについては、もっと自分の身体の特徴を自分自身で知ろうとするトレーニングもしたほうがいいと思います」(菅原小春)オノツトム


独自のダンススタイルと圧倒的な存在感で活躍中のダンサー・菅原小春。

前回は「菅原小春の10代」をテーマにスペシャルインタビューをお届けしたが、今回は「菅原小春から見た“10代のダンサーたち”」について話を聞いた。

周知の通り、まさに身体ひとつを武器に、菅原は世界の舞台で多くの人々を魅了し続けている。

そんな菅原に憧れて、彼女のワークショップには日々多くの10 代のダンサーたちが集う。

そうした場を通じて触れ合う10代の姿から、菅原は何を感じ、またどのような想いを抱いているのか? 

そこから見えくる大きな“課題”について、彼女にじっくりと語ってもらった。

「箱の枠から一歩出たら、あなたはもうそれまでとは違うあなたになっているんだよ?」と伝えたいですね(菅原小春)オノツトム


内なるソウルを大切にして、はみ出す勇気をもってほしい


——いま菅原さんが10代のダンサーと触れ合う機会と言うと、主にご自身が開かれるワークショップになると思いますが。

「そうですね。特に10代と20代の方が比較的多く来てくださいます。他にもサラリーマンの方や50代の方、ちびっこも含めて様々な方が来てくださるのも嬉しいですね」

——様々な個性を一括りにして訊くのはやや乱暴かもしれませんが、そうした機会に触れ合う10代のダンサー全般に対する印象は?

「これはワークショップの場でも直接話すんですけど、正直に言うと、『みんな同じだなぁ』って思っちゃうことが多いですね。みんなよく似た体型で、同じような服を着ていて、同じようなキャップやアクセサリーを着けていて。あまりにみーんな似すぎていて、『前回も来ました!』と声をかけてもらっても、うまく覚えていられないんです。こうした傾向は、ある種『右向け右』の掛け声で揃って右に歩ける日本人の美徳でもあると思うので、決して全否定するつもりはないんですが、それでも、もう少し尖っている子がいてくれてもいいんじゃないかなって。どんなスタイルでも『これが私なんだ!』と胸を張るような10代がいてほしい。ごくたまに『おっ!?』と思う子もいますけど、ともかく私のクラスに来てくれる10代には自己主張の強い子が少ないですね」

——モーニング娘。が好きだった時期こそあったものの、ほとんど流行に左右されてこなかった菅原さんの10代とは真逆な傾向のようですね。

「そうですね。誰かの見た目を真似することから何かを始めるはいいんですけど、流行に左右されすぎている気がします。みんながあのスタジオに通っているから自分も行くとか、みんながこのメイクだから私も、とか。トレンドは悪いことじゃないけれど、ちょっと驚いてしまいますね」

菅原小春は、7月30日(日)に約1年ぶりとなる単独公演を開催オノツトム


自分なりの色や表現に自覚的になってほしい


——ワークショップでは10代のダンサーの動きを見て、一緒に踊りますよね。彼らのフィジカルな面はどうですか?

「やはり同じ印象ですね。みんな踊りが似ている。おかげさまでかなり多くの方が来てくださるので、もちろん自分の目が全員に行き届いているわけではないかもしれませんけど。フリースタイルの時間を設けても同じですね。私のクラスに来てくれる子たちは、特に私のよく知られた振り付けを踊りたいんです。でも私は『やりたくないの、すみません』と言って踊らないんです。なぜなら、ワークショップというのは振り付けを踊るための場ではないからです。同じ時間が二度と訪れない、いまこの瞬間をシェアすること。それこそがワークショップの本来の目的なんです」

——そういった画一化された10代を前にした際、菅原さんはどういった指導を行なうのですか?

「例えば、みんなの雰囲気を見て曲を選んで、全員で目をつむって、曲を一緒に感じて、私がフリースタイルで作る即興のダンスをどんどん覚えてもらって、その後、それぞれフリースタイルで踊ってもらうといったクラスをやったりします。そうしないと、最初はみんな箱の中だけで踊ろうとするので」

——箱というのは?

「自分の半径何十センチしかない、箱のようなスペースだけで踊ろうとするんです。そうじゃなくていいんです。場を荒らすのではなければ、走っても、ぶつかっても、向かい合っても、前が前じゃなくて後ろが前でもいいんです。それを伝えると、ようやくみんなぐちゃぐちゃになって踊り始める。その瞬間はすごく感動しますね」

——なるほど。

「基礎も努力も重要だとは思うんですが“縛られちゃダメだ”ということを教える指導者がもっといてもいいのかもしれません。だって海外のワークショップでは、そんなことひとつも教えていないのに、いつの間にか鏡にへばりついてズルズルとズリ落ちる動きをする子がいたりするんですよ?(笑)」

——それはなかなか強烈ですね(笑)。

「そうするとこちらもワクワクするじゃないですか! 『何で?』と考えさせられるし」

「いまの時代だからこそ、自由な10代がもっと増えるべきなんじゃないかと思うので、大いに期待しています」(菅原小春)オノツトム


——先ほど「体格も似ている」というお話がありましたが、10代のダンサーに共通して見えてくる肉体的な傾向というのはありますか? 例えばバネのある/なし、足腰の強い/弱い、肉付きのあり/なしとか。

「あるのかもしれないけれど、そこは私的にはむしろ個性に見えるというか、どうあっても魅力として映るので。ただ10代の子たちについては、もっと自分の身体の特徴を自分自身で知ろうとするトレーニングもしたほうがいいと思います。私は18~20歳の頃、それをずっと続けていたおかげで、自分の身体をよく知ることができたので」

——その頃に行っていたトレーニングとは?

「30分間のトレーニングで、ジャンプから太ももを上げて、アイソレーションをひとつひとつ行なっていくような運動でした。どんなに疲れていても、遅く帰っても、眠たくても、絶対に欠かすことなく汗をかく30分間を設けていました。その頃はダンスが仕事という意識もなかったし、ここをこう動かすとどうなるのかなと、興味本位で地道に謎を解いていたような気分だったんですが、いま振り返ると地道な努力だったのかもしれませんね。そのおかげで自分の身体だからこそ出来る動き方を知ることができて、それが強みになっていきましたから。私はこうしていましたけど、みんな表現が違うように、練習方法もその人なりのものを編み出したほうがいいと思います」

——ではあらためて、菅原さんのダンスに憧れる10代のダンサーたちへ、メッセージをお願いします。

「『箱の枠から一歩出たら、あなたはもうそれまでとは違うあなたになっているんだよ?』と伝えたいですね。内なるソウルを大切にして、はみ出す勇気をもってほしい。もちろん何でもはみ出せばいいってもんじゃないけど、自分なりの色や表現に自覚的になってほしい。いまの時代だからこそ、自由な10代がもっと増えるべきなんじゃないかと思うので、大いに期待しています」

(撮影●オノツトム 取材・文●内田正樹 ヘア●KENICHI メイク●SADA)