山下美月“晃”、兄妹の逃避行が始まった「私は幸せになれなくてもいいの。もう決めたから」<さらば、佳き日>

2023/07/11 12:01 配信

ドラマ レビュー

晃「下手したら死ぬんだからね。大袈裟じゃないよ!」


桂一も気になっていることがあった。それは鍋の食材を買ってきて、晃と親しげに話していた柳沢との関係。「彼氏?」と恐る恐る聞くと、そうじゃないという答えが返ってきて一安心する。

2年半ぶりに再会した桂一から、いろんな衝撃的な話を聞くこととなった晃。母親が帰ってきたこと、そして桂一が家を出たこと、仕事を辞めたこと。さらに、大学時代の演劇サークル仲間の松本に誘われて、彼の地元にある出版社で働こうと思っていることも知らされた。

これまで離れていたとはいえ、晃は“実家に桂一がいる”ということを唯一の心のよりどころにしていた感があり、「知らないところで(一人暮らしを)始めるのもいいかも」という桂一の言葉に、思わず「そんなのダメ!」と口に出してしまう。

冷静さを欠いた晃が「一人暮らしできないでしょ?」と止めるが、「晃が出て行ってから一人暮らししてた」と返され、「下手したら死ぬんだからね。大袈裟じゃないよ!」と焦りさえ見えるくらい“必死さ”が感じられた。

晃が「私たち、夫婦です」と爆弾発言


これまでの桂一だったら、晃のその必死さに「晃がそう言うんだったらやめておくよ」というふうになっていたと思うが、「俺、もう前に進むって決めたから」と穏やかな口調の中にも固い決意を晃は受け取った。

それに対する晃の答えは「じゃあ、私も一緒に行く」だった。その結果、出版社のある松本の地元に2人で行くことに。「月虹社」は銭湯を改装したアットホームな雰囲気の出版社で、絵本の出版がメイン。編集長・山田伝二(勝村政信)は「早速明日から来てもらおうかな」と桂一に伝え、自身が経営する旅館「伝屋」がオフシーズンで部屋が空いているから使っていいという、至れり尽くせりの待遇を用意してくれた。山田の妻・桃子(中島ひろ子)が2人を出迎えて「自宅だと思ってゆっくりして」と、夫婦揃って人柄の良さが感じられる。

ここで晃が「私たち、夫婦です」と爆弾発言。桃子が「新婚さん?」と聞くと「はい、新婚です」とニッコリ。

焦ったのは桂一。部屋に行って2人になると、晃が「勝手にあんなことを言って大変申し訳なかったと思っています。申し訳ございません。と謝るが、桂一はどうしてそんなことを言ったのかを知りたかった。

「月虹社」の編集長・山田伝二役の勝村政信(c)「さらば、佳き日」製作委員会


晃は桂一に究極の2択を突きつける


その発言のきっかけとなったのが“キス”だった。桂一が前に進むと決めたのと同じく、晃も前に進むことを決意。そこで桂一に突きつけたのが「兄と妹に戻るか、私と夫婦ごっこをするか」の2択で、「兄と妹に戻る」を選んだ場合は「もう二度とケイちゃんに会いません」ということも伝えた。

「ケイちゃんが決めて」「お願いだから後悔しないで」という言葉を伝える時の晃の表情は真剣そのもの。家を出てから2年半、一度も家に帰らなかったことを考えると、今回のことも晃の意志は強く、冗談ではなく本気だということが桂一にも伝わったようだ。

桂一がどちらの答えを選ぶにしても、晃は今のアパートを解約することは決めているので一旦、一人で戻ることに。柳沢に会い、「幸せになれなくてもいいの。もう決めたから」と伝えたところで、桂一からの返事がメールで届いた。その時の少し上がった口角を見れば、その返事がどんな内容だったのかすぐに分かった。

返事は「決めた。一緒に暮らそう、待ってる」だった。桂一のいるところに晃が戻ると、「おかえり」「ただいま」と手を取り合い、兄妹による“新婚ごっこ”の逃避行が始まった。

◆文=ザテレビジョンドラマ部