一方で、松岡といえば癖の強い役柄にも果敢に挑む反骨精神の持ち主だと思う。映画初主演作「勝手にふるえてろ」(2017年)では、脳内の片思いとリアルな恋愛の同時進行にあたふたするOL・ヨシカを演じた。松岡なりに咀嚼した“こじらせ女子”が、さらにこじれていく様子は、妙に現実的で痛々しくもある反面、テンポよくセリフをはくヨシカにはコメディー要素も感じられ、まさに彼女の演技力を存分に味わえる作品となっている。
是枝裕和監督のパルムドール受賞作「万引き家族」(2018年)では、今は亡き樹木希林さんをはじめ、安藤サクラらベテラン共演者に引けを取らない存在感を醸し出した。劇中ではJK見学店で働く女性・亜紀を演じ、体当たりなシーンだけではなく、どこか危うい店の常連客(池松壮亮)と共鳴し合い、交流を重ねていく難しい役どころに挑んだ。
また、映画「ヘルドッグス」(2022年)では、ヤクザのボス(北村一輝)の愛人・恵美裏役で、“極道の女”を演じ切った。
作品の紅一点的な存在でクールな恵美裏はかっこよく、そして妖艶な美しさを持つ女性でもあり、肝の据わった態度で組織の男性をまとめる姿は圧巻。松岡が演じることでどこか不思議な安定感すら感じることのできるキャラクターともいえよう。
今回、一部の作品を通して学生役から極道の女まで、彼女のキャリアを振り返ってみると、一筋縄ではいかない、いろいろな顔の持ち主だということを改めて知らされた。そんな松岡が最新作では“教師”という新たなキャリアに挑戦しようとしている。一体どんな癖を持つ教師になっていくのか、今からとても楽しみだ。
◆文=suzuki
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