ハリウッドザコシショウ 芸歴30年で語る、テレビのコンプライアンスに対する矜持「自分がやらなくなったら終わりでしょ」

テレビのコンプライアンスとの格闘


――昨今、テレビのコンプライアンスが厳しくなっていますが、破天荒な芸風のザコシさんにとってやりづらさは感じますか?

たしかに、やりづらさは感じます。ただ僕は「ギリ」を攻めていかなければダメだと思っているので。やっぱりテレビを見ている人から「ザコシが出てる番組って、めっちゃ面白いね」と言われたいですし。

これは少し前の話なんですけど、ある番組で、格闘技の試合で花束を投げつけた人のネタをどうしてもやりたかったから、打ち合わせの時にスタッフさんに「絶対にウケるのでやらせてください」と伝えたんです。そしたら「ちょっと確認しますね」と保留にされて、後日「難しいですね」と言われてしまいました。「じゃあ、名前を出さなければいいですか?」と打診してもやっぱり難色を示されて。
でも、やりたい気持ちを捨てきれず、収録当日、現場に花束を持っていったんです。それで、楽屋でディレクターさんと打ち合わせをする中で「一回見てくれます?」とバシッとやったら、「面白いですね。もう一回聞いてみます!」と掛け合ってくれて、本番5分前についにOKが出たんです。やっぱり、そこまでやらないと。適当な収録をして「ザコシも日和ったな」となるよりも、どんなことでも絶対に攻めていったほうがいいと感じました。

――来年2024年2月には50歳を迎えますが、五十路になっても攻めていくと。

そりゃそうでしょ。僕がそういうのをやらなくなったらもう終わりですよ。とはいえ最近、テレビ収録の現場で事前に「どんなことをやりますか?」と確認を取られることが増えました。だから、戦っていこうにも未然に防がれちゃう。もちろん、生放送なら配慮する必要があるけど、収録してみて番組にそぐわなかったら、後からカットすればいいのにと思うんですけどね。

撮影=阿部岳人


今できることの境界線をカスっていく


――ザコシさんは芸歴30年です。長きにわたる芸人人生の中で「やめたい」と思ったことはありますか?

あります。2002年にコンビを解散してピンになったんですけど、「一人では無理かな」と思っていました。この時期が一番きつかったです。だけど、じゃあ仮に芸人をやめて転職するとして「何が一番得意なのか」を考えていくと、バイトもやっていたけど苦手だし、漫画を描いて出版社に持ち込んだけど全然認めてもらえなかった。となると、当時で既に10年間続けていたお笑いがフラットに見て、僕ができることの中で一番秀でているように感じたんです。そもそも、この仕事が好きだし。そんなわけでコンビとしてはうまくいかなかったけど、ピン芸やベタなことを真面目に一から学び直すほうが、人生うまくいく可能性は高いような気がしたんです。

――最後に、8月5日から開催される単独ライブツアー「ハリウッドザコシショウのミニ単独ライブシリーズ SEASON14」のお話も聞かせてください。チケットは即完売、9月17日(日)東京・四谷区民ホールでの追加公演&配信も決定しましたが、今年も例年同様、2時間を超えるボリューム満点のライブにしていく予定ですか?

はい。逆にどうですか?1時間くらいで終わって、チャラチャラした感じでネタをするなんて。そこら辺の売れない芸人がよくそういうのしてますやん(笑)。だから、せっかく単独ライブをやるんだったら、2時間半くらいは絶対にやりたい。そして、今できることの境界線があったとしたら、そこにカスっていく “カスリ芸”をやるつもりですし、観る人全員を、嫌な気持ちにさせたいです(笑)。

取材・文=小島浩平

撮影=阿部岳人