西川貴教「つまりは教育テレビなんです!」、“知事”はシャレでも企画はガチ、地方創生に取り組むBS番組への本気

2023/08/04 08:30 配信

バラエティー インタビュー

西川貴教が本気で取り組む「バーチャル知事」1年の種まきに手ごたえ撮影:梁瀬玉実

歌、舞台、ドラマにバラエティと、長年マルチで精力的に活動しているタレント・西川貴教。芸能活動のかたわら、故郷・滋賀県を大切にしていることでも知られている。たとえば“滋賀ふるさと観光大使”として「イナズマロックフェス」を主催することで地域振興に貢献し、2020年には「滋賀県文化功労賞」を受賞。そんな西川が、無料のBS放送局「BSJapanext」でMCを務めているのが『西川貴教のバーチャル知事』(毎週土曜 夜10:00-11:00)だ。バラエティとは思えないほど“ガチ”で挑んでいる「地方創生バラエティー」について、詳しく語ってもらった。

番組のきっかけは「なんでも好きなことを」と言われたから


――『西川貴教のバーチャル知事』が始まって2年目に突入しています。番組が始まった経緯からお聞きします。

西川:もちろん覚えています。「BSJapanext」さんが開局するにあたって、「なんでも好きなことをやってください」とオファーをいただいたんです。僕も振り返ると長いこと地域振興・地方創生に関わってきたものでしたので、「だったら自分のライフワークでもある地方創生の取り組みを番組にしていただけるのがいいかな」ということをお伝えしました。

――「こういう番組をやってください」という“番組ありき”ではなかったんですね。

西川:だから僕は出演するだけでなく、企画の段階から入らせてもらってます。地元の人からいただく相談や課題を企画として持ち込んだりして、制作陣の持ち込み企画と合わせて会議したうえで「こういうのを今後扱ってみようよ」と話すんですね。そのあと現場へ視察したり、相談してくれた人に話を伺ったりします。

いまはSDGsなどに注目が集まって、地上波でも取り上げている番組がありますよね。ただこの番組ほどそこに特化してやっているのは、ほとんどありませんよね(笑)。すごく珍しいこともあって、ゲストの人にも驚かれます。

先日も石破茂さん、デービッド・アトキンソンさんといった、最前線でSDGs問題に取り組んでいる方に出演していただきました。いま現在、大きな課題に立ち向かっている人たちから直接お話を伺えるというのは貴重な機会です。

番組でお話をした皆さんは僕にとってのシンクタンクみたいなものであり、繋がりを持てたのは非常にありがたいと思ってます。1人ひとりが課題に対するスーパーコンピューターみたいなものなんですが、せっかくなら並列化して処理速度を上げたり、精度の高い“解”を導き出したい。恐らくそうした多くの検証を経た答えでないと、広くたくさんの人に「これが解決策です」と申し上げることができないと思っているんです。そこに対しては貪欲にというか…。

逆に言うと、ホント“勝手にやってること”なので(笑)。「バーチャル知事」と銘打っている通り、こうした取り組みの成否は僕個人のメリットも収益もないし、なんなら持ち出しも多いくらいなんですよ。でも「勝手にやってることだから良いよね」というか、そういう野放し感がいいんですよね。放し飼いなんですよ!「勝手に社会貢献してる人」っていう感じ(笑)。

撮影:梁瀬玉実


“ガチ”で取り組んできた成果は育ってきている


――1年を振り返って、番組を通して得た手ごたえなどはありますか。

西川:1年間、番組が取り組んできたことを周知できたのは大きいと思います。そして地元の人たちにも「あ、冷やかしじゃなくてちゃんと向き合おうとしているな」と思ってもらえたんじゃないかなと。そういう意味で、「1年かけて種まきしてきた」とも言えます。そうすると人が人を呼んでくださって、文科省から直接番組に意見を届けに来てくださったりとか、現在社会貢献活動をされている人について地元の人に知ってもらうことができました。

結構、実験的なことをやっていたと思います。でも粘ってきた甲斐があって、すごく育ってきているというか。企画自体や、投げかけた想いというのは葉をつけてきたという認識です。

――特に手ごたえのあった放送回のテーマはありますか。

西川:毎回濃密なテーマだったんですけど、最近だと地元の教育問題についてはすごく考えさせられました。たとえば小中学校の部活動について。国は働き方改革などためにいろいろ政策を定めるんですが、じゃあいままで教員の方々が受け持っていた部分を誰が受け持つのかまでは決めていないんです。受け皿がないまま制度だけが施行されてしまう。

この問題については、いち早く地元のスポーツ系の大学がヒントになりました。お隣の京都から依頼を受けて学生さんを派遣していたそうで、せっかくならこの方法を地元でも導入したいと。

ほかにも、子どもって大きい声を出したり楽しんでいるのが仕事みたいなものじゃないですか。でも一部の大人から「うるさい」とか「遊ぶな」といったクレームが入るなんてよく聞きますよね。国は「少子高齢化を可及的速やかに解決しなければ」と言いますが、その受け皿になる町や大人たちは同じ認識にはなってないという問題もあります。

少子高齢化なんてみんなが“豊かになる”以外に解決策なんてないと思うんですが、いまは「知らない人が損をする」ことって多いんですよ。「知ってる人しか得していない」という制度がとても多い。番組でも触れましたが、特に顕著なのは「ふるさと納税」なんかまさにそうです。こうした情報を「得られている人」と「得られてない人」の格差をいかに減らしていくかが、マスメディアというか、我々の任務だと思っているんです。

地上波では高齢者層に寄った意見を伝える番組もありますが、そういう意味ではBSJapanextさんなんかはしがらみが少ないステーションでもあります。そこで地方創生に特化した番組を作れることは非常に意義も意味も大きいと考えています。

「バーチャル知事」(BSJapanext)※提供画像

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