コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、私たち人間に必要不可欠な“水”が突然少しだけ硬くなったら…という物語を描く『気まぐれな水』をピックアップ。
漫画家の勝見ふうたろーさんが6月10日にTwitterに投稿したところ、衝撃的なラストシーンも話題を集め、7.9万以上の「いいね」が寄せられ反響を呼んでいる。この記事では勝見ふうたろーさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
ある朝、少女は蛇口をひねると水が硬くなっていることに気づく。硬くなった水は手で掴むことができ、引っ張るとずるずると伸びる。蛇口から離すと洗面台の上で潰れた球のような形をして、流れないままそこに存在していた。
世界中で水の突然変異が起こり、その対応に四苦八苦する人々。そんな中、魚や貝など水の中でしか生きられない生き物たちが忽然と姿を消してしまう。しかし、人間や陸性の動物たちはどういうわけか“硬くなった水”に適応できているようで、なぜかこれまでどおり水を水として身体に取り込み生きることができていた。まるで最初からそうだったかのような人間たちの順応性を、少女は不思議に感じる。
1ヶ月ほど経つと騒ぎは徐々に収まり、インフラや医療などの問題も解決。逆に、水を使ったレシピの考案や新しいテーマパークができたりと、人々は“硬くなった水”のある生活を楽しむまでになっていた。“濡れない世界”にわずか1ヶ月で慣れてしまった人間。しかし、その後再び別の“変化”が起こると、物語は衝撃の結末を迎える…。
身近に存在する“水”をモチーフに、さまざまな変化にもいつの間にか順応していく人間の不思議さ、慣れることへの恐ろしさを斬新な視点で描いた本作。Twitter上では「衝撃のラスト」「めちゃくちゃゾッとした」「発想が面白い」「ラストで動揺した」「独特な世界観」「人間の慣れってほんとにすごいよな」などの声が寄せられ反響を呼んでいる。
――『気まぐれな水』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
きっかけは、本当になんでもない思いつきでした。「水がちょっとだけ硬くなる」という文章が頭の中にポンと出てきて、「え?なにそれどういうこと?」と(自分の考えながら)疑問に思ったのが始まりです。
――本作をTwitterに投稿後、7.9万を超える「いいね」が寄せられ、読者による考察も相次ぎました。今回の反響についてどのように受け止めていますか?
僕も思ってもみなかった広がり方をしていて、正直驚いています。みなさんそれぞれ自分なりの考えを述べてくれていて、すごく嬉しいですね。
「『水が少しだけ硬くなる』という絶妙な設定を思いつけるのがすごい」という感想が印象的でした。確かに自分でも「絶妙だな〜」と思います…。
――人間にとって必要不可欠な“水”をモチーフにした物語が印象的で、予想外のラストには衝撃を受けました。本作を描くうえでこだわった点や、物語を構成する際に意識した点があればお教えください。
なんでもない日常が明らかに異質なものに変わっていって、その中で普通に生活していく人たちの奇妙さを描くために、日常生活の描写についていろいろ工夫しました。今思い返すと、コロナ禍に陥った世界の微妙な空気感を表現しているような気もします。
――本作の中で特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?
固形の“水”をしゃくしゃく食べるシーンと、“水”をホウキで掃いて集めるシーンです。半個体の水の異様な質感をうまく描けたと思います。
――勝見ふうたろーさんは他にも『飛ぶ男』や『失踪 再走』など人間味あふれる“感情”を描かれることが多いようにお見受けしますが、創作全般においてのこだわりや作品への向き合い方がありましたら教えてください。
漫画やその他の表現を通して、“片隅の世界”を描ければいいな…と、いつも思っています。大多数に押されて片隅にはじかれた気持ちや考えにこそ、何かいいものがあるんじゃないかと思っています。
人間は多面的で、かつ変わり続けていくものだと思っているので、あまり一々拘らずに、受け入れられない思想や感情であっても、とりあえず「うん」とうなづいて傍にいる。そういう姿勢を作品に込めていきたいと思っています。
――最後に読者やファンの方へメッセージをお願いします。
いつも読んでくださり、ありがとうございます〜!これからも気の向くまま、勝見らしい作品を描いていきたいと思っておりますので、新作が出来た時はまた読んでくださると嬉しいです…。
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