伊藤英明、13年ぶり舞台出演は“怖いけど挑戦” 自分のためだけではなく、誰かのために演じる

ずっと自分に自信がなかった

伊藤英明撮影=友野雄


――先程、舞台は怖いけれど挑戦だというお話がありました。50代を前に、俳優活動の中で壁にぶつかったり、何かが足りないと思うような経験があって挑戦してみようと思われたのでしょうか?

何かが足りないということはずっと感じていました。自分に自信がないし、緊張によってパフォーマンスを落としてしまうことへの恐怖感があった。それをどうしたら克服できるか、色々な人に聞いていたんですけど、特に心に刺さったのは「TOKYO VICE」で共演したアンセル・エルゴートの「僕も自信がなかったけど、俳優として舞台に立った経験が自分を変えたから、舞台をやるべきだ」という言葉。そんなとき今回のお話を頂いたので、天の思し召しだなと思いました。

――すごくいいタイミングだったんですね。ご自分にずっと自信がないというのは、いつからですか?

本当にずっとです。特に舞台は、最後に出たときも嫌なまま終わってしまったので、そこに向き合って逃げずにやることが区切りになるというか、次のステップにつながると思いました。

――渡米もそういった理由からですか?

渡米は、もちろん自分に何か足りないと思ったこともあるんですけど、どちらかといえば子どもと向き合うためです。自分が幼少期、親に愛されてはいたけど入院生活が長くて、あまり親と一緒に過ごせなかったので、自分の子どもと向き合うことで、そこで失ったものを取り戻したいと思ったんでしょうね。

アメリカに行って気づいたことがあって。俳優としてグリーンカード(アメリカ永住者カード)をもらったんですよ。最初、英語も使えないし、アメリカで俳優の仕事があるわけじゃなかったから、職業を書く欄にも困ってしまったんですけど。でもそうじゃないんだ、何か表現したい思いがあれば俳優なんだ、と思いました。

同時にアメリカの現場だと、世界中から優秀なクリエイターが集まりやすい。一から…って言ったら大げさだけど、誰も僕を知らないところから人間関係を作ったり、スタッフの気持ちを掴んで「あなたと仕事してよかった」と言ってもらった経験は刺激になりました。自分自身だけじゃなく、周りのパフォーマンスも上げながら撮影に向かっていかないといけないんだと気づいたんです。僕はもしかしたら今まで周りの邪魔をしていたのかもしれないなと。

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