声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像作品や舞台俳優としても幅広く活躍する佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本から受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。
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暑い日々が続くと考え方も陰鬱としてきてしまう。上手く負の感情を追い出せない自分にもイライラしてしまう。そんな私も私自身が受け入れてあげたい思う作品と出会った。
加納朋子さんの「カーテンコール!」は廃校が決定した大学をそれぞれが問題を抱えているが故に卒業できず、特別補講を大学の寮に住み込みで受講するところから始まる短編小説だ。それぞれの抱える問題は想像よりも重く、自分の考え方を改めたいと思えた。人と違うことをしたり、集団生活で足並みを揃えられない人は「変わっている子」とジャンル分けされてしまいがちだが、それには理由があったりそれまで歩んできた人生経験というのは強く影響されるものだ。
「変わっていると思われたい!」と思って行動をしている人はほとんどいないと言えるだろう。
私は周りから「陽キャ」「コミュ力お化け」「変わってるよね、目立ちたがり屋?」と言われることが本当に多い。だが、何度言っても信じてもらえないが、基本がネガティブだ。どのくらいネガティブかというと電車を待つために並んでいる時必ずと言っていいほど別の場所に移動するために私の前を人が横切る。これはどこに並んでいても、だ。
真ん中に並んでいようが先頭に並んでいようが最後列に並んでいようが関係なしに人が通る。そのたびに私は「この人の前は通りやすそうって顔してるんだろうな」と少し悲しくなる。
日々ちょっとした事ですぐに落ち込むので自分の機嫌を取るのはすごく大変だ。
だからこそ本作には共感する文章が沢山散りばめてあった。
「結局あのくすくす女たちは、自分たちの価値観が最上級だと信じていて、そこから外れる人間が許せないのだろう。いい方にも、駄目な方にも。」
まるで自分のモヤモヤを言語化してくれたようだった。
本書を手に取ろうと思ったきっかけが帯に書いてある解説から抜粋された「『私の気持ちなんかだれも判ってくれない』と感じた時、本の中にあなたによく似た人を見つけてほしい。」という言葉に惹かれたからだった。
大学を卒業して半年が経ったが、作中に登場する女の子たちと度合いは違えど経験したことのあるものばかりで頷きながらページを捲った。
大学というのは長い五月病みたいな時期がなぜかある。10代の頃は頑張ることを頑張る力みたいなものが湧水のように溢れ、20代に突入した途端頑張ることに疲れている自分にびっくりして湧水のように溢れていた頑張る力たちは急激に枯れてしまう。この自分にうまく付き合えないとまるで自分自身の全てを否定されたかのような感覚になってしまい、気づけば取り残されてしまっている。勿論、学ぶことが好き、仲間とコミュニケーションを取る時間が好き、そんな時期はなかったという人もいるだろう。少数派だと思っていた自分の経験が小説という形で読めることが嬉しく、そして寄り添ってくれたような感覚になった。
帯にある通り「人生は迷って悩んであたりまえ。」なのだ。
これからも私の人生は迷いと悩みを乗り越えて納得のいくカーテンコールを迎えられるよう、歩み続けていきたい。
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