コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、“特殊な機能を備えた洋服”をテーマに描いた漫画『ない洋服の話。』をピックアップ。
本作の作者は、“実際に存在しないものやサービス”が登場する漫画「ない〇〇の話。」シリーズで人気を博す漫画家・蛯原しげるさん。2023月6月10日に本作をTwitterに投稿したところ、1.3万件を超える「いいね」や反響が多数寄せられた。本記事では蛯原しげるさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
物語の舞台はとある洋服店。買い物に来た主人公は、同じデザインなのに“1万円”も値段に差がある洋服を見つける。疑問に感じているとそこへ店員がやって来て、高額な方は“防音仕様になっている”と伝えてきた。
しかしイマイチピンとこない主人公は、服を防音にして一体何のメリットがあるのか尋ねたところ、店員は「例えば会議中にお腹が鳴ってもへっちゃらですし~」「ズボンタイプだとおならをしてもバレませんね~」「くしゃみみたいな大きな音も消せるんですよ~」と説明。実際にくしゃみを消す実演もしたことで、主人公は「商品ですよね?それ…」とツッコミを入れていた。
謎の商品ではあったものの、結局商品を購入した主人公。自宅に戻って試しに頭からかぶってみたところ、完全な防音空間に包まれて心地良くなる。そして周囲が静かになったことで眠気が襲い、主人公は洋服を脱ぎ捨てそのまま眠りについた。
翌日目が覚めると、時間はなんと昼の12時30分…。仕事があるにもかかわらず、完全に寝坊をしてしまったようだ。そこで主人公は“アラームを設定していたスマホ”に目をやる。すると、昨夜脱ぎ捨てた“防音仕様の洋服”がスマホの上にかぶさっており、アラーム音が防音機能でかき消されていることに気づくのだった――。
変わった機能を持つ服によって、思わぬ事態が起きてしまう本作。ネット上では「店員と主人公のやり取りが漫才みたいで笑った」「オチが好き」など称賛コメントと共に、「マジで欲しい!」「売ってたら絶対買う」「何かと便利だし、いびき対策に使えそう。どんなに高くても買いたい(笑)」など、防音仕様の洋服を羨むコメントも寄せられている。
――『ない洋服の話。』を創作したきっかけや理由があればお教えください。また、「ない〇〇の話。」シリーズを描こうと思ったきっかけもぜひお伺いできればと思います。
私は胃腸が余り良くないほうで、空腹か空腹じゃないかに関わらず、お腹から音が出ることが多かったです。やはり音を聞かれるのは恥ずかしいですし、そんな時に服が防音だったらいいなと思ったのが「ない洋服の話。」を創作したきっかけです。
また「ない○○の話。」シリーズは、そういった私の願望や夢のようなものを表現できたらいいなと思い、創作を始めました。「ある○○の話。」というタイトルでPR漫画のようなものも描けるんじゃないか?と思い、企画をした作品でもあります。
――本作では、防音仕様の服を活かした“オチ”がとても印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
多くの「欲しい!」という感想を得られるように、実際にあったらどう便利なのかを服屋の店員さんにプレゼンさせました。
あとキャラクターの寝坊の理由を「目覚ましをかけたはずなんだけど、音が鳴らなくて起きられなかった」という、実は根幹は日常で誰もが一度はやったことがあるエピソードに設定して、共感を得られるようにしています。
そういった「欲しい!」という感想や共感などの感情にこだわって話作りをしています。また「ない○○の話。」シリーズでは、前の話で出てきたものを密かに登場させるということしています。『ない洋服の話。』にも、ちょっと変わったところがあると思うので、ぜひ探してみてください。
――『ない洋服の話。』で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
キャラクターが速攻で服を買っちゃうシーンが気に入っています。高くてもつい何でも買っちゃう人って私は魅力的だと思っています。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
日常生活から着想を得ています。「ない○○の話。」シリーズには日常から少し外れたネタが好ましいです。そのため日常生活を過ごしながら「今、こういうものがあったら少し生活が楽しくなるのではないか。でも本当にあったらこういうことが起きちゃうな」ということを考えています。
余りにも日常生活から離れすぎた突飛な設定を思いついてしまった場合、共感が得られにくくなるのでボツにしたり、別のマンガのネタに使ったりしています。
――蛯原しげるさんの作品は、短いストーリーでもしっかりとした起承転結で上手くまとめられており、とても読みやすい印象を受けました。作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか?
ありがとうございます!昔、4コマを描いていた経験が活きていると思います。最近はページ漫画をかいているのですが、4コマに比べてページ漫画は最後まで読んでもらうというのがなかなか厳しいです。
特にTwitterは流れが早い媒体ですので、そもそも読まれずに飛ばされてしまうことが多いです。自分の作品はやはり最後まで読んでほしいと思っているので、1ページ目でしっかりとした引きを作ることを意識しています。読者たちが次のページを読む理由を1ページ目で作って、最後まで読んで頂けるようにしています。
――「ない〇〇の話。」シリーズの中で特に思い入れの強い作品はありますか? もしあれば、理由と共にお教えください。
「ない○○の話。」シリーズの中では特に『ない食券の話。』が気に入っています。ネタから話作りをして、「つかみ」「共感」「オチ」がキレイにまとまった時が一番気持ち良かったです。「ない○○の話。」シリーズがほんの少し広まったキッカケの作品の一つでもあります。この記事を読んでいる方も是非読んでみてほしいです!
――今後の展望や目標をお教えください。
マンガで食べていけるようになって、今の仕事を辞めたいです(笑)。小さい頃から漫画家を夢見ていました。定職についた今でも夢は諦めていません。マンガのお仕事お待ちしております!
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
Twitterで「ない○○の話。」シリーズや別の作品も公開しています!ぜひ遊びに来てください~!
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