【漫画】「普通」という言葉に押しつぶされる神様…同じような悩みを抱えている読者から「神もそうなら仕方ない」と共感の声続出

2023/08/05 10:00 配信

芸能一般 インタビュー

「普通」の意味がわからず、感情が押しつぶされてしまう神様のリリイ画像提供/ののもとむむむさん

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、Twitterにさまざまな創作漫画を投稿しているののもとむむむさんの『「普通」で滅んだ世界と、その創造主の話』だ。

同作は6月30日に投稿された“人間を導くための天啓を与える神様”の漫画。「普通」という言葉に頭を悩ます神様のお話に、「神様でも悩む問題なのか…」「主人公の感情が刺さる」というコメントが多数投稿された。多くの人から注目を集めた同作は、1.6万もの「いいね」を獲得している。

神様も頭を悩ます「『普通』って何?」問題

『「普通」で滅んだ世界と、その創造主の話』(1/16)画像提供/ののもとむむむさん

かつて世界を制した栄光や形を忘れ、何も生み出すことができない人間。そんな人間を導くため、神は天啓を与える。しかし、主人公の神であるリリイはこの“天啓を与える”という作業が苦手だ。

神は生物たちに知恵や摂理を与え、世界を運営させるように管理する存在。リリイは天啓として植物の繁栄を告げた。しかし上司の神には「普通に考えたらわかるだろう」「神の仕事を舐めるな」と怒られてしまう。

リリイは神になって3年目。これまで何度も同じようなミスを繰り返し、何度も世界を滅ぼしてしまった経験がある。同僚で仕事ができるロゼに相談すると、「普通にやればいい」と諭される。

これまでも「普通」という言葉を何度も告げられ、そのたびに「普通にならないと」と思い続けてきたリリイ。しかし「普通」という言葉に押しつぶされてしまい、リリイは布団から起き上がることができずに、とうとう神様の役割を放棄してしまう…。

「普通」という言葉に悩まされるリリイに対し、ネット上では「普通になることって最も難しい問題かもしれない。私もそうだった…」「自分も悩んでいるのに、神もそうなら仕方ない」など共感の声が多数上がっている。作者である描いたののもとむむむさんに、同作を描いたきっかけなどについて話を聞いた。

「普通」という言葉は現代にあまりアジャストしていない言葉

『「普通」で滅んだ世界と、その創造主の話』(7/16)画像提供/ののもとむむむさん

――『「普通」で滅んだ世界と、その創造主の話』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

この漫画を描いたのは3年前で、当時は勤め先を病気でやめたり、バイトもうまくいかなかったりで「普通の人生を送りたかった」と思うことが多く、それをただ単に日記のようにしても描いてて楽しくなかったので、何か物語の形で昇華しようと思って描いたのがきっかけだったと思います。

――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。

2ページ目のグチャ〜ってなった地球とかですね…。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

2ページ目が個人的には気に入っています。この時期の漫画は版画のように描いていて、黒く塗って消しゴムで消して線を作っていました。2ページ目の背景などはその特徴が顕著に出ていると思います。

――神でも人と同じように働き、悩んでいるという描写がとても面白く感じたのですが、このアイデアはどのような時に思いついたのでしょうか?

上記のように働いている時に色々うまくいかないことがあって、「どうして自分はみんなと同じように普通になれないんだろう?」と思うことがありました。

そこから、おそらく神様がいたとすれば、もしかしたら同じように悩む時があるのではないかと考えて描きました。歪な世界を運営している歪な神様という構造は、ある種グノーシス主義的な要素があるように感じています。その点から「冒涜的だ」とお叱りのリプライをいただいたりして、まあそれはそうだなと思いました。

――同作に登場する「普通に」という言葉は、確かに日常会話でもよく使われていると思います。「普通」に対する作者としての意見を教えてください。

人を束ねる、カテゴライズする上で非常に使いやすい言葉ですけど、個人主義的な時代、1人ひとりの価値観が尊重される時代において、あまりアジャストしていない言葉なのではないかと感じています。ある種ハッシュタグのような働きをする言葉というか。みんなを率いるような立場の人だったら、すごく使いやすかったんだと思います。

――今後の展望や目標をお教えください。

この漫画を描いた時期は自分にしか描けないような、みんなをあっと言わせる漫画を描きたいと思っていました。でも今は考えが全然違っていて、幅広く読んでもらえるものを描きたいと思って漫画を描いています。読んでもらえるもの。わかりやすいもの。雑誌に掲載して、紙の媒体で自分の作品が載っているのをみて、自分の本が単行本として並んでいるのを見てみたいです。あとはそれに並行して小説や本の表紙とか、音楽のジャケットの案件などもあれば随時引き受けて、いろんな場所に「ののもとむむむ」という名前を広げていきたいです。

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!

今は悪魔であるネルネと漫画家である原さんがギャグをやったり、ラブコメやったりする漫画をTwitterでやっているので、よかったら読んでみてください。

あと不動産会社の経営している漫画サイトに、隔月でコミカライズ漫画も描いています。『TOKYO2020』という漫画です。こちらは原作は別の方なのですが、雰囲気は今回の漫画に近いと思うので、よろしければ。