ペイトン・エリザベス・リー、若き“ディズニースター”の類い稀な素養とポップな演技にゾッコン

2023/08/05 07:10 配信

映画 レビュー

ペイトン・エリザベス・リーが扮するマンディ「PROM?」とカラフルなパネルでかわいく誘う(C)2023 Disney

ペイトン・エリザベス・リーが主演を務めるディズニー・オリジナルムービー「プロムの約束」が、7月28日にディズニープラスで配信された。同作は、卒業を目前にした高校生たちが参加するダンスパーティー(プロムナード)への誘いを巡るロマンティック・コメディー。今回、幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が本作を鑑賞し、作品の見どころやペイトンの魅力を独自の視点で紹介する。(以下、ネタバレを含みます)

まさに青春ストーリー


「うわー、アメリカだなあ! 青春だなあ!」心の中でそう叫びつつ、「プロムの約束」に見入ってしまった。いまどき珍しいのではと思えるぐらいストーリーに物騒なところがなく、単純明快。私がすぐさま思い出したのは、高校卒業後の4人の若者を描いたジョージ・ルーカス監督の映画「アメリカン・グラフィティ」(1973年公開)だが、あれは時代設定が1962年の話であり、それからの60年の間にアメリカは変化した。

いろんな民族的ルーツを持つ、いろんな趣向の人が一つのフレームに集まって、語り合い、笑い合っているのが、「プロムの約束」の現代性である。近日中に必ずもう一度見たいと思ったし、そのときはポップコーンとコーラが必需品だろう。できれば気の合う友人と共に、ワイワイ楽しみたいものだ。

さあ、ここで出てきそうな質問が「プロムって、いったい何?」である。日本の学校生活ではとても聞き慣れない言葉。好意を寄せている人と一気に親しくなるための、アメリカ独特であろう、学校公認の催しものといえばいいだろうか。とある英語学院のサイトには「アメリカの高校生活における最大のイベントで、卒業を目前にした高校生のために開かれるダンスパーティー」と記されているが、基本的に、ダンスは1人で踊るものではない。そうなると相手が必要だ。どうせなら、憧れの人と手をつないだり、見つめ合ったりして、クルクル踊りたいではないか。高校生活における最大のイベントは、ばっちり決めたいところだろう。

この「プロムの約束」は、オリジナルタイトルが「Prom Pact」だから、“契約を結ぶ”という意味の英語慣用句“form a pact”の駄じゃれなのかもしれない。「プロム」に参加して、いかに楽しめるかが、“陽キャ”と“陰キャ”を分ける大きな溝となるのだろう。だが世の中、パーティーピーポーだけで成り立っているわけではないし、大人数のにぎやかな雰囲気に和めない人もいる。それはアメリカであっても日本であっても変わらないはずだ。

主役として登場するペイトンが扮(ふん)するマンディは、どちらかというと“陰キャ”。陽キャ連中が学校で毎日のように盛り上がっていようと関心を持たず、世界の名門ハーバード大学に入学することを目標に勉学を重ね、入試では「保留」扱いを受けるまでになった。入学できるかできないか、その間をヤジロベエのようにグラグラ揺れている状態だ。だが、彼女はどうしてもハーバードに入りたい。

映画「プロムの約束」より(C)2023 Disney

一大決心で“陽キャ”の渦に


そんな折、陰キャ系の親友・ベン(マイロ・マンハイム)が、耳寄りな情報を持ってきた。“陽キャ”のトップクラスに位置するグレアム(ブレイク・ドレイパー)の父がハーバードを卒業した大物政治家で、同校に強力なコネクションを持っていることが分かった。マンディは、一大決心をして陽キャの渦に飛び込んでいく。

何しろグレアムは陽キャの中でも一目置かれているだけあってルックスもよく、「金持ち喧嘩せず」の表れということか性格も明るく穏やか、しかもバスケットボールに堪能なスポーツマンなのだから、モテまくるのは当たり前。彼とマンディの関係にドキドキハラハラし、親友とはいってもやっぱりマンディへの恋心(彼自身は気付いていないかもしれないが)は隠せないベンにエールを送っているうちに、あっという間にクライマックスシーンに案内されてしまうという寸法だ。