2022年、ドラマ「やんごとなき一族」(フジテレビ系)の演技で話題となり、その後も連続ドラマや映画で存在感を発揮している松本若菜。今年2月には自身初のフォトエッセイ「松の素」を上梓した。現在、ドラマ「18/40~ふたりなら夢も恋も~」(TBS系)にも出演中の松本が、素直な気持ちをトークする本連載。今回は、女優としての役と向き合い方や、ドラマ撮影の舞台裏でのエピソードを語る。「松本若菜の夏」のリアルな様子とは?
8月も半ばだというのに、夏らしいことは何ひとつできていない松本です。花火も見られていませんし、浴衣だって時代劇のお仕事のときにしか着ていない……。でもそのおかげで、どんどん着付けが上手になってきましてね。今撮影中の大河ドラマ「どうする家康」でも、お稽古だったり、かつらをつけるときなどに、ササッと自分で着ています。
仕事用の浴衣はガシガシ洗えるリーズナブルなものですが、お出かけ用の浴衣も一応持ってはいるんですよ。その浴衣は、中学生のころ、母方の祖母が私と姉2人にそれぞれ似合う色の反物を選び、あつらえてくれたもの。そのころから私、腕だけは長かったんですよね。でも祖母が袖丈の長い浴衣を作ってくれたから、大人になった今でも着られるんです。残念ながら最近はなかなか着る機会はないのですが、今年は着たいな。着られるといいなぁ。
「どうする家康」では、家康の側室、阿茶局(あちゃのつぼね)を演じています。阿茶局は甲冑を着て戦に同行し、政治にも関わるという、側近としての一面も持つ女性です。今回の作品でフォーカスが当たるのは阿茶局の側近としての部分ですが、ときには側室としての顔が垣間見えるシーンもあって。ちょっと細かくなるかもしれないけれど、表情やしぐさといった部分で、家康を想う阿茶局の心情も表現できたらなと思っています。
そしてそして、先週の放送では福原遥ちゃんの出産シーンが話題になった、現在放送中のドラマ「18/40~ふたりなら夢も恋も~」。こちらの作品では産婦人科医を演じていまして、遥ちゃん演じる有栖の主治医として出産にも立ち会いました。産婦人科医の役は何回か演じたことがあり、出産シーンも経験しています。でも何回やっても私、妊婦さんと一緒にいきんじゃうんですよ。それで毎回、頭に血が上って酸欠状態になるという。今回はそうならないようにと思っていたのですが、やっぱり本気でいきんでしまいました。でも医療監修で携わってくださっている先生にうかがったら、先生も出産に立ち会う際にはいきんでしまうそう。そんな先生のリアルな声を聞き、ご指導いただきながら演じたシーンでした。
この日の撮影は、朝7時に現場に入って、終わったのが24時すぎだったかな? 放送されたのはほんの数分ですが、出産シーンの撮影は長い時間をかけて行われたんですよ。遥ちゃんは私以上に大変だったはずなのに、撮影の合間には「若菜さん、食べ物は何が好きですか?」と質問してくれたりして(笑)。癒されましたねぇ。そこでお互いお寿司が好きだとわかり、「じゃあ、今日の撮影のごほうびはお寿司だね」といったら、「はい! お寿司食べたいです」と元気に答えてくれた遥ちゃん。あの後、お寿司は食べられたかな?
「18/40~ふたりなら夢も恋も~」に携わってくださっている医療監修の先生が、これまた素敵な方なんですよ。妊婦さんに寄り添って、同じ気持ちで接してくださる先生なんですが、私にも同じように接してくださるんです。「ここはこうですか?」と質問すると、そのたびに一緒に悩んでくださって。そんな先生のことばから、気づけたことがたくさんありました。たとえば第1話の、薫が深田恭子さん演じる親友の瞳子を診察して、「子宮内膜症で、妊娠しづらいかもしれない」と告げるシーン。仲がいいからこそ、薫は「何でもっと早く、瞳子に検診を受けるようにいえなかったのか」と後悔したんじゃないか。でも仲が良ければ良いほど、そういったパーソナルな部分には踏み込みづらいんじゃないか。そういったことにも思いが及んだのも、実際にお友達を診察した経験のある、先生のことばのおかげだったんです。
監督とは、この作品での薫は、主治医20、親友80くらいの比率のお芝居の仕方がいいんじゃないか、という話をしていました。けれども自分なりに考えて、このシーンだけは医者の顔でいようと思い、演じました。薫は瞳子の親友だけど、医者です。言いづらくても、やっぱり伝えるところはしっかり伝えなければいけないんじゃないかと思ったんです。何回か演じた「産婦人科医」という役ですが、作品によって、役柄によって、そして他の役との関係性によって、お芝居は変わるんですよね。日々勉強です。
ついつい話が長くなってしまいましたね! こんなふうに「私の夏」を送っています。
取材・文=恩田貴子
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