恋愛×サスペンスの極上ドラマ「空から降る一億の星」で改めて振り返る“韓ドラ”の魅力

2023/08/12 11:30 配信

ドラマ

極上ドラマ「空から降る一億の星」で振り返る“韓ドラ”の繊細な魅力(C)Studio Dragon Corporation/Fuji Television, all rights reserved.

一過性のブームとしてではなく、いまなおさまざまな年代から強い支持を受けている韓国ドラマ。特に注目を得ているのが、華やかで繊細な描写が多いラブロマンスのジャンルだ。たとえば日本ドラマが原作である「空から降る一億の星」を例に、韓国ドラマの魅力を改めて振り返ってみる。

北川悦吏子脚本の日本版ドラマをリメイクした「空から降る一億の星」


2019年に日本で放送された韓国ドラマ「空から降る一億の星」は、2002年に日本で制作された北川悦吏子脚本の同名ドラマをリメイクした作品。幼い頃に両親を亡くした広告デザイナーのユ・ジンガン(チョン・ソミン)、ジンガンの兄でベテラン刑事のユ・ジングク(パク・ソンウン)が、謎多き男キム・ムヨン(ソ・イングク)に翻弄され、それぞれの運命の歯車が動き出す様を描くラブサスペンスだ。

児童養護施設で育ち、他者に許容や共感を求めることなく生きてきたが、ジンガンに心を開くようになるムヨン。そして彼の危うさを本能で感じ取りながらも次第に惹かれていくジンガンの距離が近づいていく過程が韓国ドラマ特有の情感たっぷりに描かれている。

ジングクは自身が担当する女子大生殺人事件にムヨンが関与していると直感し、2人の仲に反対することに。複雑に入り組む人間関係と、3人の過去に絡む真実がジェットコースターのように目まぐるしく展開していく。

日本の原作ドラマとの違いは、原作より長い全16話でキャラクターたちの心の機微をより鮮明に表現したことや、韓国版ならではの新たな要素を加えたこと。登場人物の職業や出会いのきっかけ、さらにはラストの重要なシーンまで日本版とは異なるというまさに“リメイク”作品になっている。原作ありきで硬直せず、より良い作品を作り上げようという制作陣の情熱も、いまなお韓ドラが高い人気を誇る一因といえるだろう。

空から降る一億の星(C)Studio Dragon Corporation/Fuji Television, all rights reserved.


イングクの色気とミステリアスな魅力が炸裂


なかでもファンの目に強烈に焼き付いたのは、“キス職人”の異名を持つソ・イングク。彼の溢れ出る色気と、一見すると善人とも悪人ともつかないミステリアスなムヨンというキャラクターを見事に演じ切った才能はドラマへの没入感を大きく高めた。

愛という感情を知ることが許されなかった生い立ちであるが故に、いとも容易く他人を弄ぶムヨン。屈託の無い態度で近づいたかと思えば、何のきっかけもなく冷徹になり、その強烈な二面的魔性で数々の女性の心をかき乱していく。“誰にも心を開かない”はずのムヨンがジンガンと出会ったことで失われた感情を徐々に取り戻すさまを、胸が詰まるほど繊細に描いている。

「本当に凶悪な事件と関わっているのではないか?」という推測と疑念をより深くさせる“影”、人としての柔らかさと温かさを少しずつ見せていくようになる“陽”。2つが混在して入り乱れるムヨンの人物像を、イングクがグラデーション豊かに演じ切った。こうした人物の描き方、演じ方で生まれるストーリーテリングの妙も、韓ドラが支持される所以の1つだ。

空から降る一億の星(C)Studio Dragon Corporation/Fuji Television, all rights reserved.