翌日の朝、いつものようにアパートの廊下で顔を合わせる2人。昨日のことで緊張した表情の藤子だったが、蒼真からは普段と変わらない爽やかな笑顔が向けられた。だが変わらない挨拶のあと、「あの藤子さん…今日の夜、話したいことがあります」と言葉が続く。藤子が了承すると、蒼真はやはりどこか張り詰めた表情で「じゃあ今日も、ベランダで」と告げる。
仕事から帰った藤子は、蒼真がまだベランダに出ていないことを確認。部屋で「うわっヨレヨレ…そもそもTシャツ?」などと服を吟味しつつ、結局はいつも通りの姿で向かうことを決めた。おつまみも買い込み、準備は万端。あとは蒼真の帰りを待つのみだ。
ベランダでひと足先にビール缶を開けた藤子の耳に、隣のベランダから物音が飛び込む。猫のような鳴き声とともに、何かが倒れた音がした。声をかけて蒼真がいないことを確認しつつ、間仕切りに設置した段ボールの扉を開ける藤子。すると、蒼真のベランダに置かれたプランターが倒れている。おそらく、さきほど鳴き声が聞こえた猫のせいだろう。
少し迷ったが、植物も生き物。見てしまったからには放っておけない藤子は、蒼真に小さく謝りながら間仕切りに開いた穴を通ってベランダへ。「だいじょぶかっ」と小さく声をかけながらプランターを助け起こし、手早く戻るために立ち上がった藤子の目に飛び込んできたのは、カーテンの隙間から覗くおびただしい数の写真たちだった。
蒼真の部屋に貼られた異常な数の写真に、思わず窓へ身体を寄せる藤子。すると、窓がわずかに開いた。鍵がかかっていないのだ。遠目にも女性が写っているとわかる写真の正体をたしかめるため、良心の呵責と葛藤しつつも部屋への侵入を決めた藤子。
そして壁一面に隙間なく貼り出されているのが“自分の隠し撮り写真”と知った藤子は、自然に息が苦しそうに早く浅くなっていく。脇の机に置かれたボックスには、密閉容器が整然と並べられている。手に取ると、そこに収まっていたのは「2023年7月7日 藤子さんが食べたアイスの当たり棒」「2022年10月21日 藤子さんの髪の毛」などといったおぞましい“コレクション”たちだ。
「なんで…なんで…!」と混乱のあまり呼吸がさらに早まっていくなか、突如玄関のライトが点灯する。息を止めて藤子が振り返った先には、絶望に染まった表情の蒼真が立ち尽くしていた。お互いの目は合っているのに、世界から音が失われたような静けさが場を埋めつくす。お互い一言も発することができないまま、番組のエンディングテーマが物語の小休止を告げた。
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